第8話 山暮らしの竜、文明の素晴らしさを感じる
「ほわあ!! こくりゅうしゃま、これおいひいれふぅ!!」
「……」
俺の目の前には美味しそうな食事がずらりと並んでいた。
一皿一皿が高級レストランで出てくるような仕上がりをしており、実際に美味しい。
俺の獲った川魚のムニエル超美味しい。
野草の中でも香ばしい匂いのするものをふんだんに使用しているせいか、口に入れた途端、鼻から爽やかな香りがすっと抜けていく。
素材の味も活きており、前世で食べたどの料理よりも美味しかった。
アルメリアも美味しそうに頬張っている。
頬が膨らんでいてリスみたいで、ぶっちゃけ超可愛いです。
いや、それは一旦置いておくとして。
「……天使さん、だよな?」
「はい」
この美味しい料理を作った美少女。
肩まで伸びた銀色の髪は枝毛一つ無く、顔は人形のように整っている。
いや、俺の抱いた感想は間違っていないのだろう。
「天使さん、その身体って本当に人間じゃないのか?」
「はい。旧魔法文明が作り出した生体ゴーレムです。主に神殿内の清掃や神官たちの世話をするためのユニットのようでしたので、拝借しました」
見た目は普通の美少女。
しかし、その中身は核戦争によって滅びた旧魔法文明とやらのオーバーテクノロジーが使われている人形らしい。
地球にもそっくりのロボットはいたが、ここまでリアルなものは無い。
人間はある程度人間の姿に近いものを見ると嫌悪感を抱くというが、今の天使には嫌悪感など感じられない。
だって、身体がエロいのだ。
アルメリア程ではないが、美しく形の整ったおっぱいが頭から離れない。
今は神殿の倉庫に保管されていたメイド服を着ているが、服の下を想像して悶々としてしまう。
いや、落ち着こう。
俺にはアルメリアがいるのだ。他の女にうつつを抜かすほど、俺はゲスではない。
俺は雑念を振り払うように話題を振った。
「旧魔法文明ってのはどれくらい発展してたんだ?」
「そうですね……。貴方の知る地球より幾分か発展しています。宇宙開発も盛んでしたね」
「異世界では聞かないような言葉が聞こえてきたな」
宇宙開発までしてたとか、どうなってんだよ旧魔法文明。
どうして滅びちゃったのか。
いや、前に女神様や天使さんが言ってたな。核戦争が原因だって。
そこまで発展した文明が戦争一つで衰退して、今は中世ヨーロッパ同然の文明レベルとか勿体無さすぎる。
戦争しないで互いの手を取り合えるような平和な世界があったら良いのに。
「むむ、お二人で内緒の話ですか?」
俺と天使が話していると、少しムッとした様子のアルメリアが割って入ってきた。
どうやら除け者にされてご機嫌斜めらしい。
「いや、少しな。戦争なんて無くなれば、人間はもっと凄いことができるだろうなと話していただけだ」
「……それは無理ですね」
「ふむ。断言するのか?」
「はい」
アルメリアは少し悲しそうに頷いた。
「人は人の数だけ異なる考え方をしています。万人が同じ考えをしていたなら、それは人の姿をした虫か、あるいは一人の支配者に洗脳されているだけです。――と、以前本で読みました!!」
「なるほど」
「ですので、大切なのは相手を如何に尊重するかだと思います。皆が相手を思いやり、共に協力し合う。どうしても譲れない時は話し合いをする。まあ、話し合いでも解決できないから戦争が起こってしまうんだと思います」
俺はアルメリアが本の知識を鵜呑みにしてしまうタイプだと思っていたが、そうではなかったらしい。
本から得た知識を自分なりに吸収し、理解して自らの糧にする。
そういうタイプの人間だったようだ。
「旧魔法文明の人間たちに聞かせてやりたい台詞です、アルメリア様」
「えへへ、そうですか?」
「……ねぇ。なんか俺とアルメリアで態度違うくない?」
「気のせいです」
いや、気のせいではない。
アルメリアに対しては少し微笑みかけていたが、俺にはとんと無表情のままだ。
「……本音を言うのであれば、アルメリア様は私の貴方に対する意趣返しに巻き込んでしまった方です。多少の引け目がありますので、礼儀は尽くします」
「本当に本音をぶっちゃけたな」
「えーと、よく分からないですけど、私は黒竜様と一緒にいられて幸せですよ!!」
アルメリアが良い子すぎる。
「アルメリア様はお優しい方ですね。貴方には不相応では?」
「そろそろ怒るからな? 俺だって傷つく生き物だということを忘れるなよ?」
「左様ですか」
「こ、この天使!!」
見た目が美少女で良かったな!!
オッサンゴーレムだったらボッコボコにしてるところだったぞ!!
「はふぅ、もうお腹いっぱいです」
「おや。デザートの果物は要りませんか?」
「要ります!! 食べたいです!!」
……まあ、天使さんとアルメリアの仲が良さそうで何よりだ。
こうして食事を終え、片付けは天使さんにお願いして俺とアルメリアはベッドでイチャイチャすることにした。
「あひっ♡ 黒竜様っ♡ 激しっ♡ 天使様に聞こえちゃうっ♡」
と、天使が近くにいる羞恥心からか、アルメリアはいつもより感度が良かった。
でも冷静に考えてみたら、実態が無かっただけで天使は最初からアルメリアとの行為を俺の中で見守っていたわけで。
やっべー、めっちゃ恥ずかしいな。
「うへへ~♡ 黒竜しゃまぁ♡」
「……おやすみ、アルメリア」
アルメリアは五、六発ヤった辺りで眠ってしまった。
俺は喉が渇いたので、神殿の外にある泉で喉を潤そうと部屋を出た。
と、そこで天使と遭遇する。
「あっ」
「ん? 天使? 何を……やって……」
俺は状況を理解するまで、時間がかかった。
何やら天使はメイド服の下に手を自らの忍ばせていた。
天使の足下には小さな水溜まりができており、誰がどう見ても一人遊びの現場だ。
俺とアルメリアのベッド上での戦闘を覗いていたようにしか見えない。
俺は旧魔法文明のゴーレム作りに対する情熱を侮っていた。
まさか身体の機能をここまでリアルに再現しているとは想像もしていなかったのだ。
心の中で過去の生体ゴーレムを使った英霊に敬礼する。
「違います」
「天使さん」
「……違います。――全機能を遮断」
あ、逃げた。おーい、天使さーん?
『……』
「反応無し、か」
どうやら見られてしまったことがよほど堪えたのか、天使は俺の呼び掛けを無視する。
まあ、非常時には応じてくれるだろう。
それはそれとして。俺は天使さんのあられもない姿を見て大きくなったドラゴンソードをどうしようか悩む。
今からアルメリアを起こすのは可哀想だし。
「……今、このゴーレムには天使さん入ってないんだよな?」
俺は興味本位でゴーレムが着ているメイド服を脱がせてみた。
すると、また驚愕する。
女性の身体を正確に再現しており、おそらくはそういう機能もある。
「……これは浮気じゃない。人形だ。だからセーフ!!」
俺は自分を納得させるように呟きながら、ゴーレムの身体を堪能する。
素晴らしかった。
人間とは斯くも素晴らしきものを作れるのかと、本気で脱帽した。
それだけに、これ程のものを作れる文明が滅びてしまったことが残念でならなかった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「天使さん性欲あるんやね」
天「無いです」
「旧魔法文明しゅごい」「天使さん可愛い」「天使の主張に無理があって草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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