第7章 塗り替えられる過去
第51話 過去へ
「リーシュサマをどうやって復活させるのですか?」
そもそも死んだ者を復活させる方法なんて思いつかない。あのレンと呼ばれる者ですら死体を操ったりしているだけなのだ。
ルウは真っ黒いリーシュを想像して顔を歪めた。大好きな憧れの英雄が不気味な姿で復活する姿はあまり見たくは無い。
『まずは私に魔力を戻して欲しいの。今はレンに身体を取られてしまっているから力が無いんだよね』
あっけらかんとそう言う蝶々の声音にルウは苦笑しか無かった。何故〈創世神〉がレンに身体を乗っ取られる経緯を辿ったのかは分からないままだが、今はそんな事を尋ねている時間も惜しい。
「アタシに出来る事ならやりますっ!」
青い蝶々は嬉しそうにふわふわとルウの肩に止まり、その羽を止めた。
『ルウは今から過去へ行って貰いたいの。四大精霊から私の力を貰ってきて』
現在の四大精霊の力は精霊石に封印されていたがそれも先程使ってしまっていたので、はっきり言うと今のイリアはただの弱々しい蝶々な上に魔力は空っぽだ。
「でも、過去にどうやって行けば……?」
『私の残った力で
「ディオにまた会えるの!?」
『あの子は頭がいいからこの未来を告げるだけで全て分かってくれる。その後の指示はディオギスから貰って』
時間が無いわと呟いた蝶々はゆっくりと鱗粉で五芒星を描いた。
その先に見える空間は異次元のようにぐにゃぐにゃしており、見ているだけで気持ち悪くなる。
『急いでルウ。レンを止めるのは今の貴女しか出来ない』
「わ、分かりました……行ってきます!」
──────
「わぷっ!?」
長い
「いったたた……もう少し速度落としてくれたらいいのに」
頭と服についた土をほろい落とし、ルウは久しぶりに見るメタトロン帝国の城壁を見上げた。
確かに最初訪れた光景に似ているので、これが現在の時間ではないのだと言うことは理解出来る。だが問題は自分の種族が
最初はディオギスのお陰で中にすんなり入れたが、今は味方が居ない。それに入ってすぐの貴族街の時点で追い返される可能性もある。
「どうしよう……」
門の前でウロウロしていると気配もない存在から首筋に冷たいナイフが当てられた。
「動かないで下さぁい〜。不届き者は成敗ですぅ」
聞き覚えのある間延びした声に、ルウは当てられたナイフの冷たさも忘れて安堵した。
「その声はレノア! 良かった〜! レノアが居てくれたらディオと話が出来る!」
「な、なななななななんですかあなたは!? どうしてレノアの事を知っているのですか!? それに、お師匠様の事をなんたる呼び方!」
確かに過去のレノアと何も接点は無い。とは言えこの出会いはまさに幸運だった。ここでレノアを逃してしまえば、ルウが1人でディオギスに会う事は不可能に近いだろう。
「ごめん! 説明は後、ディオに会わせてお願い……!」
「怪しいヤツは死刑ですぅ!」
そうだった。レノアはかなりの直球だ。
ルウがレノアの攻撃を避けられるはずもなく、首筋を完全に斬られた──と思ったが。
「……でもでもぉ、何故か貴女は嘘をついている気がしないですぅ……」
怪しい者をメタトロン帝国へ入れないようにするのが彼女の役目なのに、初対面のルウの不思議な言動に完全に惑わされているレノアはかなり困惑していた。
「嘘じゃないよ、とにかくディオに話をさせて欲しい……! アルカディアの未来に残された時間が無いんだ」
「むむぅ……レノアどうすれば良いでしょう……お師匠様に危険な奴を会わせるのは……」
「もう! 見て分かるじゃない! アタシは武器だって何も持ってないんだから!」
身体1つで過去に飛ばされたルウは今更ながら唯一の武器である木槌すら持っていない事に気づいた。
しかしここで自分の身体を触った事でふと大事なものを発見した。
「これだよ、これ! レノアが未来のアタシに渡してくれた布袋! 見覚えあるでしょう?!」
「!? 何故、貴女がお師匠様の最高傑作を……」
ガロンへ行く前に色々なものを入れてくれた布袋を高く掲げるとついにレノアはへなへなと座り込んだ。
「ど、どどどどうして未来から
「いやアタシが居たのは多分、今のこの世界よりちょっと先だし、ここにワープしたのは、イリアサマが開いたゲートってやつで、多分そんな技術はまだ無いと思う」
それに、あちこちに飛べる技術が簡単に出来たら危険しかない。
ルウが体感した
「むむぅ……レノア初の大失態かも知れませんが、レノアがお師匠様の作った最高傑作無限袋は見間違えるはずありません」
「じゃあ……」
「やっぱり、悩むくらいなら死刑ですぅ!」
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