第47話 エレナVSレン
イリアの身体を乗っ取ったレンが大きく両腕を広げた。白いローブからボタボタと黒い液体がこぼれ落ちる。
『────』
『ガアアアアッ……!!』
黒い液体はゆっくりと
両腕にはエレナの持つジャックザリッパーとほぼ同じ形態の短剣が握られていた。
それらは一瞬だけ獣のような咆哮を上げたが、すぐに機械混じりの音声へと変わる。
『ギギ……ターゲット・エレナ』
「あぁ、お前達。エレナは絶対に殺すな。あの綺麗な顔と身体は残して置きたい。僕の最高のコレクションだからな。──他は好きにしろ」
レンはクスクスと楽しそうに笑い、再度ローブの間から黒い液体を零した。次に産まれて来たのは
「おいおい……まさかこいつら……」
「ほんっと、最悪! 変異を生み出した源がコイツなんでしょ!──多分、今までの変異から情報を得ているハズ」
メルルは自分を襲ってきた
「冗談じゃねえ……こいつら全部相手にしたら」
「まあ、無理よね。いくらあのエレナって
「いってて……何、これ。寒い、寒い!」
イリアからレンに豹変した瞬間に吹き飛ばされ、漸く意識を取り戻したもののルウは変わり果てた穴倉の様子に自分の居る場所が分からなくなっていた。
「……漸くお目覚めかよ、ルウ」
「マオ、メルル、一体何があったの?! イリアサマはどうしておかしくなっちゃったの?」
ルウには〈創世神〉がまさか変異したとは想像出来ずに2人に答えを求めた。
「あれは〈創世神〉なんかじゃないわ。〈破壊神〉よ」
「ど、どういう事……? なんでエレナサマがイリアサマに剣を……」
『コロ、ス』
「危ねえ!」
ルウがオロオロしている間にどんどん周囲に黒い塊が増えてきていた。全て今まで変異したものの成れの果て。マオは見覚えのある
レンの出したモノは目標を殺す事のみインプットされており他の感情は一切無い。形の原型は人型であれど、中身はまるで機械だ。
『ふふふ──さあ、お前達セラフクライムを破壊しろ。アレさえ消してしまえばもはやこの世界に敵は無い』
レンは召喚した黒い変異達のターゲットをエレナではなく、マオの近くに置かれたセラフクライムのガードへと変えた。
黒い
「だ、ダメ……オヤジが命を賭けたセラフクライムは守るんだ……!」
「ルウ、お前には持てないって……!」
現状をまだ受け入れきれていないルウではあったが、何より守るものだけは認識していた。ガードの上に自分の身体を乗せて庇う。
グランが創ったガードはアルカディアの希望。英雄が死した今であっても何か方法があるはず。
「アタシがガードを持てなくてもいい……絶対に守るんだ、オヤジの魂を、長老、ミラルダサマ、エレナサマ……!」
『──馬鹿な
「ルウ……っくそ」
エレナは目の前に湧いている同胞の成れの果てと対峙しており、どう切り抜けてもルウの下までたどり着く事が出来ない。
マオも怯えるメルルを庇いながら
「ルウっ──!」
「お願いお願い……イリアサマ、リーシュサマ、セラフクライム!」
レンの放った業火に焼かれ死を覚悟していたルウだが、火の感触は無く不思議な光に包まれていた。
「あ、れ……?」
『何だと、何故不完全なガードが機能する。そんなバカな──』
「バカは貴様だレン……!」
光に包まれたルウを見て隙が出来ていたレンにエレナはすぐさま剣を向けた。
『ちっ……もうアレを倒したのか。流石〈死神〉と言った所か』
「──私は屍の上に立っているからな。赦されるとは思っていない。貴様を殺し全てを変えるまでは……!」
再度エレナの剣とレンの身体から出ている障壁がぶつかり合う。
『この身体のままでは不利か……
光に守られているルウを未だに攻撃していた
『ターゲット変更、了解──目標捕捉』
『あぁ、でもエレナを殺すなよ。まあ手足くらいは飛ばしても構わないけどね。その綺麗な顔さえあれば』
レンはクツクツと不気味に笑っていた。数でも戦力でも自分の方が完全に優位。今も余裕しか無いのだろう。
命令変更により、
「私は貴様のコレクションになるつもりは無い。お前は絶対に殺す。冥界にも行けず、異次元で永遠に彷徨うように……!」
とは言え向かって来る敵は全てジャックザリッパーのコピーを持っており、エレナにとってかなり相性が悪かった。
しかも
厄介なのは小細工が通用しない事。エレナは少しずつ距離を取り、一体ずつ確実に仕留める方法に変えた。その分ルウとさらに距離が出来てしまっていた。
「くそ……
エレナはこのままでは拉致があかないとメルルを守っているマオを呼んだ。分散されて戦うのは得策ではない。
しかも相手は無限に変異を召喚出来るのだ。早く敵が優位になっている空間を割らない限り、こちらがジリ貧になるのは目に見えていた。
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