第5章 風の精霊石を求めて
第33話 エルフとダークエルフ
「おい……何でお前まで付いて来るんだよ」
間髪入れずマオが腕にしがみついてルウを牽制するメルルをうんざりした顔で見下ろしていた。
「あらん、ミラルダ様からの命令よん。私はダーリンと一緒に
メルルはさも当然と言ったようにそう言い放つ。
彼女は再度陸の世界で動けるようにミラルダから
「いや、確かにルウの手伝いはありがてぇけど、俺はお前のダーリンじゃねぇよ」
まだ同じ事を言ってるのか、とマオは再び溜息を吐いた。何度言っても盲目気味なメルルには通用しない。種族も違うのにここまでマオに執着する何か他の理由でもあるのだろうか。
「まあまあ、仲間は沢山居た方が楽しいじゃない。ね?」
「ほらぁ〜!
「だからって、いちいちベタベタすんじゃねぇ! 大体もうすぐ
「エルフかぁ〜! エレナサマに逢えるかなぁ。ど、どうしよう、憧れのエレナサマに逢えるなんてすごい緊張する……!」
マオにいつまでもベタベタするメルルと、エレナへの想いを馳せて陶酔するルウ。
何とも締りのない面子にマオだけが周囲へ警戒を続けていた。
(何が厄介かって、
マオが危惧する
元々は同じ
最初は2種族の中で何か争いが発生した訳では無いのだが、根強い自然愛護者と改革派の
魔法は詠唱時間を要する為、その一瞬の隙に数名の
同胞を捉え研究材料とした
(そして──厄介なのが【召喚術】。じっちゃんの記憶によるとあれはかなり危険だ)
「ダーリン? 難しい顔してどうしたのよぉ」
「……お前は
「んふっ。バリバリ持ってるわよ、ホラ」
メルルは胸元から折り紙のようなもので作られた人型を取り出した。亀とは違う召喚なのだろう。
「お前は暑苦しいから苦手なんだが、魔法戦になったら頼りにしてるからな」
「あらん、やっと私の必要性が理解出来たようね。任せなさい、私の魔力だって
──────
小高い丘に立つピンク色のポニーテールの女性は隣国に蔓延る黒い巨大な魔力城壁を見て、その美しい顔を歪めていた。
「エレナ様」
副官はエレナの後ろに膝をつき手短に厳しすぎる現状を告げた。
「先発隊は既に殺られたようです。彼奴ら、まさか悪魔まで……」
「こればかりは嘆いても仕方ない。こうなる事はイリアが予測していただろう?」
先発隊の
元々が同じ種族なだけに、互いの弱点も熟知している。
彼らは音に敏感なのだ。普通の者には聞く事すら困難な“怪音波“を出す魔物を放つ事で彼らの指揮系統はいとも簡単に乱れてしまう。
「厄介な【呪術】で城を囲っているみたいだ。さてどう攻めるか──」
相手は敵味方の判別が無く全てを糧とする畜生を召喚する。
さらに、拠点を覆い尽くす黒い魔法の壁。その材質を確かめたかったのだが先発隊は全滅。これでは悪戯に仲間を犠牲にするだけであり、迂闊に攻めるのは厳しい状況であった。
「エレナ様、
副官が耳をヒクつかせ、周囲を散策している3つの気配を探っていた。相手に敵意があれば先に始末する必要があるからだ。しかしそれをエレナはやんわりと止めた。
「……ふん、どうせイリアに頼まれて来たのだろう。アイツら如きにリーシュの身代わりが出来るわけが無い」
「では、早々に追い返しましょうか?」
隣に立つ副官が背中の矢に手を当てたところでエレナが笑みを浮かべそれを制止した。
「いや、久しぶりの獲物だ。もしもアイツらが希望になり得るのであれば」
エレナの期待に副官は眉を顰めた。
「しかし
「ああ、それこそイリアが精霊石を託した種族であろう。アイツらが束になって私と同等くらいの戦力を有していれば、あのシャルムを奪還出来る可能性もある」
2人は下に広がる巨大な森をぎゃあぎゃあと騒ぎながら、そこが敵陣である事も忘れ緊張感の欠片もなく歩く3種族を見下ろしていた。
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