第3話 「疑惑」

白雪姫の治療を始めて数ヶ月。



彼女の体調も少しずつ回復に向かい、順調かと思っていたときだった。「毒で人が倒れている」


王宮の庭で、一件の不幸な事件が王国全体を震撼させた。王宮の著名な医師が突如倒れ、毒によるものだと疑われる症状で苦しんでいるとのことだった。庭は通常の静寂を失い、不安と緊張が空気を満たしていた。花々が咲き誇るその美しい場所が、一瞬にして混乱の場と化してしまった。


私はすぐに駆けつけ、その医師を観察する。口から泡を吹き、体を痙攣させながら苦しんでいる。私は迅速に状態を診断する。痙攣、呼吸困難、意識も混濁している。噂の通り毒物による中毒症状だろう。

「治療小屋へ運んでください」医官に命じて運ばせると、私は自身の道具から何点か取り出す。

まずは解毒作用のあるハーブを用いた煎じ薬を準備し、患者に飲ませる。次に激しい痙攣を抑えるためには、体の特定の圧点を押しながら、痛みを軽減するための軟膏を患者の肌に塗りつける。鎮痛効果と解毒能力を期待してだ。


次に私は薬草を焚き、その煙を吸入させる。毒物による呼吸困難への対処法だ。呼吸を楽にさせる。患者の反応を慎重に観察。治療の効果を見極めながら手順を調整する。


最後に意識の混濁にはローズマリーを含む混合ハーブを作成する。体力の回復と精神の明晰さを促進する効果があるとされており、基礎体力に依存はするが、成人男性ならおそらくはこれで問題ないだろう。おおよそできることはした。後は回復を祈るばかりだ。私は治療を終えて、水を飲むために治療小屋から出たときだった。


「どうして女王はあんなに早く正確な解毒剤を用意できたのだろう。普通なら調査が必要だが、彼女はすぐに何をすべきかを知っていた。これは計画的なものではないか?」それは医師の助手である若き学者からだった。


私が迅速に解毒剤を用意したことが、かえって周囲の疑念を深め、「彼女が毒を盛ったのではないか」と他の宮廷人間にもささやき始めた。

またか、と私は思わず落胆してしまう。馬鹿馬鹿しい。仮にそれが正しいなら、なぜ助けたのだろうか。関係のない医師を毒殺する理由もない。道理を考えればありえないと思う。けれど大衆はどうでもいいのだろう。


宮廷の中でささやかれる疑惑の噂は、静かながらも猛烈な速さで広がり、私の立場は次第に揺らいでいった。


私は公の場で微笑みを保ちながらも、内心では緊張と不安を抱えていた。


ある晩、私は宮廷の庭を一人で歩いた。月は明るく、その光が庭園の花々を照らし出していた。夜風が薄紫のラベンダーや深紅のバラを優しく揺らし、その香りが空気を満たしていた。花々の美しさと静けさは一時的な慰めとなり、私はその中で深く思索にふけった。


「誰がこんなことを?」心の中で問いかけながら、私は必死に冷静を保とうと努力した。誰がこの疑惑を流したのかはまだ分からなかったが、私は自分の無実を証明する必要があると痛感していた。私は証拠を集め、支持者を確保し、必要なら公開で自らを弁護する準備を始めた。


私は長い時間を庭で過ごし、夜の静寂の中で次の策を練った。毒に関する私の知識が疑惑の原因となっていることから、毒物学に関する講演を開くことを決めた。これにより、私の専門知識がどのように正当なものであるかを示すと同時に、毒を調合する際の倫理的な取り組みについても強調することができると考えた。


計画を練り上げた後、私は庭を後にし、宮廷に戻るために重い扉を押し開けた。その一歩は重かったが、私の心は決意で固まっていた。

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