第2話

 女子会って言うから、僕はおしゃれな、言うなれば映える様な所を想像していた。


 そこで、水玉に連れてこられたのが、カラオケ屋だったので、つい水玉に「ここっ?」なんて聞いてしまった。


 彼女達の女子会は、カラオケ屋の一階のパーティースペースで大きく仕切られた壁の向こうから、騒がしい歌声が小さく漏れている。


「皆お待たせー!!」水玉が女子会の会場の扉を開くと、強烈な香水の様な制汗剤のような化粧品の様な……つまりは、女臭い匂いがモワッとしてくる。

 この香りは……そうだ!!女子更衣室の匂いだ!!その香りにアルコールの匂いが混ざって中々キツイ。

 まぁ、なんで女子更衣室の匂いを知ってるかは置いておいて。


「おう来たか水谷」声のした方を見るといくつか並べられたテーブルの上座に何故かクッションをいくつも重ねてその上にタイトスカートであぐらをかいている一人の美少女?がいた。


 というか、何と言うか、僕のその人に対する感想はだった。


 えっ?この子何歳?中学生位ちゃうの?可愛い子だけど、どう見ても幼過ぎるだろ?見た目は黒髪長髪で目がクリっとした可愛い子なんだけどね?


 後、パンツ丸見え。


「おい、そこの!!」結構、迫力のある大きな声に、(ヤバいパンツ見てたのバレた!?)とビビりつつロリっ子の方を見ると、どうやら別の件でご機嫌斜めらしい。


「お前今、私の事小さいとか思っただろ?」大きな瞳を三白眼のジト目にして睨み付けられる。

「あっ?そっち?」パンツの件では無かったらしい。


「なんだ!?他に何かあるのか!?」


「いえいえ、何でもありませーん!!ちっちゃいとか中学生かな?とかウザい先輩が好きそうとか、パンツ見えてるとかそんな事考えてませーん」

 小さな子は、見る見る内に顔を真っ赤にするとお尻の下に敷いていたクッションの一つを僕の顔めがけて投げる。

「お前、最悪だーー!!後、ウザい先輩って何だよー!!」そう言ってあぐらを正座にした。やっぱり恥ずかしかったのね?後、投げられたクッションは温かかった。


 隣にいたお姉さんが小さな子の頭を撫でながら、

「このちっちゃい……」ボフッ!!あっ小さな子にクッションで殴られた。

「失礼しました。私の名前は林田凛子、こちらの方はうちの美術部の部長で小豆田まゆ先輩で、こう見えても二万二十一歳です」

「エルフですか!?いやエルフでも二万は無いだろ!?」


「駄目だな少年、そこは悪魔か!?が正しい」


「畜生、そっちかぁー!!で本当はは何歳?」


「二十一で〜す!!ちなみに私は二十歳」


「先輩、同い年じゃねぇか!!で、あんたは年下か!?」


「君等、初対面なのに息ぴったりだな!!」思わず水玉がツッコミを入れて来た。


「「うぇ~い」」僕と林田さんがハイタッチをすると美玉と小豆田先輩を含める他の人達が呆れた顔をしているのが分かった。


 カラオケの音も丁度一息ついた頃、小豆田先輩が挨拶を始めた。


「全員集まったな!?」小豆田先輩の迫力のある声。


 なんか族の集会っぽいな。


 部長の小豆田先輩の声にもうお酒が入って出来上がった女の子達数人が「「ひぁ〜い」」と酔ってふやけた声を出す。


「やっと全員集まったのにもう酔ってるとは情けない奴らだな」小豆田先輩が呆れた顔をして、何故か持っている酒坏をかざすと林田さんがうやうやしくヒョウタンに入った濁り酒を酒坏に注ぐ。酒坏にヒョウタン?なんであんなものあるんだ。


 そっと、林田さんに聞くと、以前買ったパーティグッズで気に入ったらしくヤフオクで本物を手に入れて喜んで使っている様だ。


「今日は我ら美術部の女子会に来てくれてありがとう!!」小豆田先輩は椅子の上に立つとカラオケのマイク片手に挨拶を始める。


 クッションの上に立つからグラグラしてちょっと怖いな。思わず高い所登っちゃ駄目でしょ?お家の人はどこ?とボケたくなる衝動に駆られて必死に堪える。


 それにしても、美術部かよ?うちの大学の美術部は女性メンバーだけで構成されていて色々と良くない噂を聞く。


 例えば、写生の為のヌードモデル確保の為に何も知らない男子学生を襲撃して何時間も監禁したとか……。

 飲み会で隣の大学のサークルに突撃して大騒ぎをしたとか……。

 どこからか、幼女を騙して連れてきたとか……。


 うん、きっと最後のは冤罪だな。


 でも、そういえば俺の他のメンバーってみんな……。


「なぁ水玉?」


「何?」


「もしかして僕以外皆、女の人?」


「そう?」


「そうってお前、なんで僕呼ばれたの?」


「それは……」その水玉の言葉は最後まで言う前に小豆田先輩の声で上書きされる。


「そして、今日は特別メンバーとしてカラオケサークルから水谷美玉と楠木ココロ君に来てもらった!!」「おー!!」と言う歓声や「キャー男だーー!!」と言う歓声が聞こえ非常に嫌な予感がする。そして、その手の予感はよく当たるというのもよく知っている。


「何となく分かった」僕は頭を押さえながら、

「美術部か、その部員に借りがあってお前は男を連れてくる様に頼まれたんだ、そうだろ?」


「よく分かったわね!!流石、我がカラオケサークルのホープ!!よっ名探偵!!」

「なるほどね、よく分かった……じゃっ、僕は帰るから、グエッ!!」逃げようとする僕の奥襟を水玉はグワシッと捕まえて、

「ちょっと!!なんで帰るのよー!!」


「急に引っ張るな!!死ぬかと思ったぞ!!」


「そうしないと逃げるでしょ!?」


「逃げる!!イタタタッ」耳を引っ張られて思わず声を上げていると、


「潔くないぞココロ君!!君もカラオケサークルの一員なら、歌で勝負しろ!!君がカラオケの採点で百点を取ったら君の勝ち、取れなかったら私の負け!!」小豆田先輩がビシッと僕を指差し挑発する!!


「そんなの……僕になんのメリットが……」


「君が勝ったらうちの部員の林田が」「はいっ!!」小豆田さんの声に林田さんが、ビシッと手を上げる。「君が負けたら、君の所の水谷が」「えっ?私!?」急に言われた水玉が慌てる。


「服を一枚脱ぐ!!」


「それは水玉の為にも……負けられないな!!」


「なんでそうなるのよ!!」


















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