これは友達の話なんだけど……

まちゅ~@英雄属性

第1話

 えっと、これは友達から聞いた話なんだけどさ……何だよ、変な笑い方するなよ。


 良いから聞けよ。


 これは、ホラー映画何かよりもよっぽど怖い話なんだからさ……。


 後、僕の話じゃなくて友達の話だからな!!


 ☆


 とある日の木曜日、いきなり友達の女の子から電話がかかって来たんだ。

『ねぇココロ、いきなりだけど、明日暇?』


 水谷美玉、同じ大学の同期、年は俺が一浪してるから一個下、栗毛の長髪で黙ってれば凄く美人なんだが僕相手だと、気安いのかいつも大騒ぎする遊び仲間。


「なんだ?水玉、デートのお誘いか?」水玉ってのは水谷美玉を略した愛称。


『その水玉っての辞めなさいよ!!』


「なんで?可愛いじゃん」


『水玉パンツ履いてたから水玉って言われて喜ぶ訳ないでしょ!!』

 話し始めるといつもこんな感じだ。


「そんでもって、デートは否定しないと」


『バッ、バッカ!!そんなんじゃ無いわよ!!』


「知ってるよ!!」何だよ、断言する事無いだろ?

 こう見えても、この楠木ココロはモテモテだぞ?

 俺のイマジナリーの中では。


『で、どうなのよ?この私が誘って、来ないって事は無いわよね!?』最初はいつもの、お誘いかと思ったけど何となく嫌な予感がするな……。


「えーと、明日は……ちょっと用事が」『あ゙っ?』「……多分暇かなぁ」予定があると言う前にスマホ越しの水玉の威嚇するような声に、僕は思わず乾いた声をあげる。


『金曜日なのにね?』からかい混じりの声にイラッとしつつ、


「五月蝿いな、暇って言ったら暇なんだよ!!」ヤケクソ気味に喚いていると、


『ねぇ遠恋中の彼女と別れたって噂は本当なの?』少し遠慮気味に言う水玉に、知っていたのか!?とこちらの方が驚いてしまう。


 そう僕は、最近、遠距離恋愛をしていた彼女と別れたばかりだった。


 理由はなんて事無い。待っているのに疲れたとか、会いたい時に会えないのは辛いとかそんな話。


 決めては、大学のサークルで飲み会をしている最中に急にかかってきた彼女からの電話に俺のスマホ越しに聞こえてきた美玉やサークルの女友達の声。


 それが、彼女の決め手になったらしい。


 ほとんど言い訳もさせて貰えずに僕らの数年間は終わった。


「ウルサイなほっといてくれよ!!」つい荒げた声に、スマホから小さな声で『ゴメン』と聞こえた。


「あっ……いや、こっちこそ、怒鳴ってゴメン」最後はお互い気まずいまま電話を切ることになってしまった。


 ベッドの上仰向けになって、ふと寂しげな顔をした水玉を想像する。


 いつも明るくて、僕と口喧嘩ばかりしている水玉。

 喧嘩はするけど、最後はいつもお互い笑っていた。


 あいつには出来ればいつも笑顔でいて欲しかった。


 正直、元カノとの件があっても、まだ冷静で入れたのは美玉のおかげなのかな?と思う。


 まっ、とはいえ、まだ新しい恋に進むもうとするだけの踏ん切りがついた訳でも無かったけど……。


 ☆


 金曜日、午後レポートの提出を終えて大学の学生食堂でアイスコーヒーを飲んでいると、食堂の入口に見慣れた栗毛の美少女を見つけて手を上げる。


 何となく嬉しそうに手を上げて美玉が小走りに走って来た。


「なんだ?集合時間にはまだ早いぜ?」アイスコーヒーをズズっと啜って水玉に話しかけると、


「レポート提出よ、ココロもそうでしょ?」そう言って僕のコーヒーの紙カップを奪い取ってアイスコーヒーを一口飲んだ。

 中学高校ならいざ知らず今更間接キスだとか言うつもりはない。

 僕達はそういう事は気にしない関係なんだと思っている。


「うわっ三分の一持って行きやがった」悔しそうに言うと、水玉は「ごちっ」と嬉しそうにニカッと笑った。


「なぁ、今日何があるんだ?」結局、当日になっても目的は教えてもらえなかった。


 水玉は、しばらく考えた後、


「まぁ、そろそろ良いか。あのさ、今日女子会があるんだけど、みんなが男連れてこいって五月蝿くてさ」


「女子会ってのは、女子だけでやるから女子会って言うんじゃ無かったか?」


「まぁそうなんだけどね、結局飲み会で女の子ばかりじゃ盛り上がりに欠けるって言われてね」水玉は僕のアイスコーヒーを奪い取ろうとして来たので、とっさに僕は紙カップを緊急回避させる。


「あぁ、女子の食事会じゃなくて女子の飲み会の方の女子会ね。なんか怖いな」苦笑いしながら残りのアイスコーヒーを啜る。


「まぁね、結局女だけだとギスギスしちゃうんだよね?ねぇコーヒー奢ってよ!?」


 しょうがねぇなと、僕はワンコイン出して、

「どうせアイスカフェオレだろ?俺のアイスコーヒーも買ってきてくれよ」


「はいはーい、ミルク入りで砂糖無しだったよね?」

 テテテーッと走っていく水玉の後ろ姿を見ながら、もう、お互い食の趣味も、良く知ってるんだよなと苦笑する。チョコのキノコたけのこ戦争は、お互いたけのこ派、チョコ球はおれがピーナッツであいつがキャラメル、ラーメンは僕が醤油であいつが塩。


 中々、仲が良くなったもので。それにしても、女子会かよ?なんとなく男少なそうだな。


 飲み過ぎない様にしないと。


 酔った勢いで、過ちを起こすのが一番怖い。


 いくら失恋したばかりだと言っても俺だって相手を選ぶ権利位はあるんだよ?


「ココロお釣りもらって良いー?」にこやかにくだらない事を言う水玉にニコヤカに中指を立てると、美玉はブーイングをした。


 貧乏学生のワンコイン舐めんな!!


 俺の真向かいに座った美玉はアイスカフェオレを美味しそうに飲んでいる。そんな彼女を眺めながら集合時間までどうやって時間を潰そうか悩んでいた。







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