第5話 次女(財務)

私は兄と姉と別れると一人で城内を歩いていた。

私のお父様は財務大臣を務めており、私もお父様の補佐として今後財務の仕事に就く。

とはいえ他二人のように副団長のような役職を与えられるわけではなく、あくまで補佐であり一人で仕事をできるような立場ではないのだが。


「皆聞いていると思うが私の娘であるルーがこれから私の補佐として財務の仕事に関わることとなった、役職としては私の補佐として私の従者のような役割についてもらうことになる、ルーよ他の子供達は副団長として配属されるが、我々財務の仕事は知識だけではこなすことはできない、よって見習いとして始めてもらうことになるがかまわないな?」


「もちろんです、養父であるユウ様もあまり財務に関する知識はなく教えていただけませんでしたのでこちらで始めて教わることになるので、よろしくお願いいたしますお父様」


私は頭を下げるとお父様はうむ、っと頷いてくれる。

あの二人は近いうちに団長の座を奪い。ユウ様が魔王と戦うときに備えて戦力増強を行うだろう、当然戦力を増すためには財源が必要となる。

民の豊かな生活と国軍の戦力増強、その二つを同時にこなす為には今以上の財源を確保する必要があるのだが…


「では、予算についての会議を行う……その前にお前たちが提出した来年度予算の収入予定が随分と多めに見積もられているがこれについての説明はあるか?」

お父様がそう尋ねると部下たちがその言葉の意味がわからないのか、ざわつき周りのものと相談しながら資料を見るが誰もどこが間違っているのか理解できなかったようで一番立場の高いものが代表し、どこに問題が?とお父様に尋ねる


「うむ、冒険者ギルドからの税の部分だな、少なく見繕っても2割は下がるはずだ、だが何故か前年と変わらない額で計上されているがこれは何故なのだ?」

お父様の言葉を聞いて理解できないと首をかしげる

「何故それほどの額が下がると?!特にギルドの有力冒険者が国を離れたという話はございませんが……?」

この人たちは本気で言っているのだろうか?ユウ様にあれほどの事をしておいて彼がこの国から出ていかないと本気で思ってるのならいくらなんでも楽観が過ぎると思うのですが、いや、本気でそう思っているからあのようなくだらない嫌がらせをしてたのでしょうね。


「転生英雄のユウ様がこの国を出ていき、彼が稼いでいた金額そしてその稼ぎで売り買いしていたことで発生する税、それらによって税収は5パーセントは減少するだろうと思われるな」


お父様の言葉に誰もが言葉を失うまさかユウ様個人でこれほどの税収を稼いでいるとは思っていなかったのだろう。

だがそれは冒険者としてのユウ様の税収であり、そこにさらに商人として王国の外の部族との取引で手に入れた物を王国へと提出しているのだ。


「それだけではありません、エルフの霊薬、アマゾネスの秘薬、オーガの薬草などの特別な品を手に入れてきて王都に卸したのもユウ様であり、彼等はユウ様だから取引をしていたのであり、ユウ様がいなくなれば入手経路は細くなるでしょうね……」


お父様の言葉に部下たちは言葉を失う、エルフの霊薬もアマゾネスの秘薬もどちらもなくても平民は困らないが、貴族には困るものが多い。

父はそういった薬を王国に卸し国王は褒美として貴族たちに渡しており、その管理を財務が請け負っていた為財務は貴族たちから賄賂を受けられる立場にあったのだ。


「とにかくこの予算で会議をしても無駄だ、1週間後までに作り直すように……」

お父様はそういうと席を立ち、私についてくるようにという。

私は言われるがままにお父様について歩いていると、目の前から魔術師の塔から出てきた第一王子がこちらに向かって歩いてくる。


「これは第一王子様、いかがでしたか?」

お父様が王子様に尋ねる、魔術師の塔から出てきたということは姉が魔術師団の方で何かしたのだろう。

今日この日を迎える前に王子様と私たちは何度か会議を行っており、このくだらない托卵計画が行われたら協力し合うことで話が通っている。


「魔術師団については今後杖による後方支援の技術の開発のみを行い戦闘はルナが魔法学園で新たに作る魔法科で鍛えた生徒たちを使うことをメインに計画を実行する」

第一王子様がお父様にそういうとお父様は無礼にならない程度に考えこみ、すぐに頭を下げて仰せの通りにとその計画を了承する。


「ルーよ、グレイス伯爵家の娘として今後ラグナ・グレイス伯爵の力となり、魔王が復活した時のためその知をこの国に使うのだ」

お父様が了承すると第一王子は私に視線を向けてそういう、彼はユウ様のファンであり、彼の父つまり王様もユウ様のファンである。

その為。ユウ様の言葉と過去の歴史から魔王の復活を信じており、父親である国王陛下も復活した魔王と魔王軍への対応のため現在の騎士団や魔術師の改革を求めており、私達の計画的にも協力的だ。


「もちろんでございます、ユウ様が帰ってくる場所を守るのは私達3人に託された役目ですから!」

ユウ様は私たちが成人すれば自分が魔王が復活するまでに少しでも魔王復活時の被害を少なくするために旅に出ると前から言っていた。

ユウ様曰く、この王国という国はユウ様が3度目に転生勇者として活躍した時代に唯一残った人族の領土でありその時代から城壁を何代にもわたって魔法によって作り上げられたものだ。

王国は城壁の内側に街を作り上げ狭くなれば外に城壁を作るそのうちに新たな街や畑を作り少しずつ広げてきた。


最近はそんな王国から離脱し、城壁の外に新たな2つの国が興り帝国と共和国を名乗っている。

城壁の外に城壁のない国を興しても滅びることなく拡大したことは転生英雄のことを見下す理由になるらしく、そのせいで今回のくだらない事件も起きたのだという。


「私は帝国や共和国が滅びてもかまわないが王国の民は一人でも多く生き残らせたい、その為に君たちにも全力を尽くしていただきたい」

お父様と共に頭を下げるとその日は城内を父の案内を受け、貴族たちの挨拶を受けるのだった。


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その日の夜、私はお父様と共にグレイス家へと帰る、生みの母はどうやら離れを与えられてそこで楽しくやっているようだ。


「ルー、紹介しよう私の本妻であるユリーカだ」

お父様の言葉に横に立つ女性がこちらに挨拶をしてくれる。


「ユリーカお母さま、ルーと申しますよろしくお願いいたします」

私もユリーカお母さまに挨拶を返す。

生みの母はどうやら自分が正妻になることができなかったことに対する抗議も含めて離れにこもっているようだ、初めからそんなことはわかっていたのにどうも自分が実際に結婚すればなんだかんだで実家の爵位の高さで正妻になれると考えていたらしい。


「お父様とユリーカお母さまは大恋愛の末の結婚で今でも深く愛し合っているのですからその地位を奪うことなんてできませんのに……」

私の言葉にお父様は深く頷き、ユリーカお母さまは顔を真っ赤にしてそんなお父様の肩を叩く。


そんな姿もかわいらしく二人で思わず頬が緩んでしまうがそんな姿が余計に怒らせてしまったらしくより強くといっても擬音にすればぽかぽかと言った擬音が正しいほほえましいものだが。


「そ、それでルー様はどうして本当に・・・ユウ様のお子様なのに私たちの子供を名乗るのでしょうか?」

ユリーカお母さまは首をコテンと傾げながら尋ねてくる。


本当の・・・娘だからですよ、3代目魔王討伐の際人類は滅亡を回避するために血の濃さに関係なく婚姻、出産をできるよう神の加護が授けられました、ですがユウ様はその加護があろうと実の娘との結婚をするつもりはないでしょう、ですが実の娘でないなら|まだ可能性があるのです結婚することができる可能性が!」


そう、私は養父であるユウ様を家族としてではなく異性として愛しているのだ。

その為に私は彼等二人を利用する、グレイス家の子供となり、ユウ様と結ばれるのだ……!


「私としてもルーが娘になってくれることには意味があるのでお互い利用しあう関係と言えるだろうな」

そう、お父様も私を利用する、彼が得るのは私がユウ様と結婚した時、彼はユウ様の義父という立場を得ることだ……

転生勇者ユウの義父。それをお父様は求めているのだユウ様のファンとして…!


「私はユウ様の妻に、お父様は義父に、二人で臨むものを手に入れましょう、お父様…!」

こうして他の二人とは違い共通の目的を持つ私とお父様の共同戦線が張られるのだった。



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神による婚姻出産の加護

3代目転生勇者ユウと魔王の戦いは熾烈を極めた。

2度勇者との戦いに負けた魔王は魔王軍の理性を奪い、城壁に向けて魔物を突撃させて城壁を崩し民間人を中心に虐殺を行った。

結果人類は100人程しか残っておらず男はわずか5人しか残っていなかった為近親交配により人類の滅亡は避けるのは難しかった。

そんな人類を救うため、神は近親交配による人類の滅亡を防ぐため結婚した男女に祝福を与えたのである。

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