第3話 長男(父親騎士団長)

16歳になり、本来の父親に引き取られた俺は今母親と別れて騎士団の訓練場へと向かっていた。


母親曰く貴族達の多くは救世の英雄、転生の英雄と呼ばれる父が平民に生まれたことが気に食わなかったらしい。

平民が英雄として大きな戦功をあげれば平民を統べる貴族の価値が下がると勝手に思って父をはめようとしたようだ。


実際にはそんなことよりも何を為したかが大事なのだが、平和な時代が長く続いたこの世界では貴族であるということだけが価値の証明となっているため貴族が自らの価値が下がることに敏感なのだ。


「よく来たな、ハルトよ」

訓練場内を歩いていると俺の本来の父親である騎士団長が声をかけてくる、なんという家で何という名前だったろうか、どうも父と暮らしていたからか貴族というものへと興味が薄れてしまい全然覚えれない。

それが実の父親であってもだ。

そもそも実の父親と言っても年に数回しか会うこともなくあった時も母が話しかけるばかりで俺に話しかけてくることはなかった。


「ハルト、お前にはこの俺の補佐として副団長の職についてもらう、ゆくゆくは私のあとを継ぎ騎士団長となるのだ」


名前を覚えてないほうの父がそういって俺の肩に手を置いてくる。

その腕はあまりにも細く、魔力による増強もできそうにない、端的に言って弱そうだ。


「父上お願いがございます」

俺がそういうと父は返事もせずに言葉をかけてきた俺に一瞬眉をひそめたが、言ってみるといいと答える


「手合わせをお願いしたい」

俺の言葉に父がさらに眉を顰めるが俺が無言で見つめると一瞬気おされたような顔をし、その後睨みつけてくると訓練場内のグラウンドへと向かう。


父は大きな槍に大きな盾プレートアーマーと騎士らしい装備を身に着けるとこちらに槍を向ける。

仮にも騎士団長を名乗るのだ最低限騎士として戦えるだけの力は持っているのだろう。


「怪我をしないように手加減をするつもりだが、自分から挑んできたのだ多少痛い目を見てもすねるなよ?」

父が槍を構えたままこちらを見てそういう、それに対して俺は何も答えずに訓練用の大剣を片手で構える、訓練用なので一般的な大剣と重さは変わらないが、今の俺なら片手でも自在に振るうことができる。

こちらの構えを見て父上もさすがに危機感を覚えたのか槍を握りしめ顔を強張らせる。


「いくぞ」

父上がこちらに槍を構えて突っ込んでくる。

痛い目等というがまともに受ければ大けがをするだろう、そんな手加減も寸止めもする気もない一撃を俺は右手に持った大剣で打ち払う。

突進し勢いを乗せた父の一撃であってもその場で虫を払うかのようにぱんと武器を振るって打ち払うことができる。


父は勢いよく突っ込んできてそのまま払われたからかふらふらと体勢を崩す。

「どうしました父上?手加減していただけるのは嬉しいですが、俺の力量が図れませんでしたか?」


俺の挑発的な言葉に額に青筋を浮かべて父は怒声を上げながら突っ込んでくる、とはいえ魔法の推力任せの突撃は単調で簡単に払うことができる。

何度か払えば父は冷静さを欠いて全力の魔力で真っすぐ突っ込んでくる

その速度はまさかに矢のように早く音速超えた一撃だった。

「全力でその程度・・ですか父上?」

だがその程度・・だ、音を超えた程度で全力だというのならたかが知れているし、この先魔族との戦いで国の最高戦力となるであろう騎士団その団長がこの程度とは…


「父上、まだ切れる札があるならさっさと切っていただきたい、ないのならこちらから攻めさせていただくがよろしいでしょうか?」


俺の言葉に父は唇を噛み切り血が出るほど怒りに震えこちらを睨みつけてくる、だが父は槍を収めるとこちらに歩み寄ってくる。


「16歳でその腕前とは末恐ろしいな、これなら騎士団の未来は明るいな、ははは」

俺に近づいてくると肩をぽんぽんと叩き騎士団員に同意を求めるように大声で問いかけると、騎士団の者たちは同意の声を上げて俺達を持ち上げてくる。


「……くだらない」

誰にも聞こえないように俺はそうつぶやく、負けるのが嫌だから勝敗をうやむやにしようとしているのだろう。


「だが騎士団長に必要なのは個人の武勇などではない、騎士を指揮する指揮官としての技量に、騎士団を維持するための物資を安定して提供させる政治力、そして部下たちに慕われるカリスマだ」


父は俺に言い聞かせるように言う、なるほど個人の武勇よりもそういうものを優先するのが今の騎士団か。


「では父上次は集団による戦闘の手ほどきをお願いしたいのですが?」

俺の言葉に父上は顔に再び青筋を浮かべる。


「集団戦闘といってもな、この騎士団はわしの騎士団じゃ、誰もお前の下で働きたいと思うものはおらんだろう」

父上はそういって部下たちを見渡す、その言葉に追従するように頭を下げる。

一部を除いて・・・・・・だが


「それでは私達は副団長殿につかせていただきましょうか」

「なら俺達もだな」

追従してなかった一部、第2騎士団と第8騎士団の団長が声をあげる。

この国では初代転生英雄が7人の仲間と共に魔王を倒したという話から、7までの数字を重要視する。


その為第8騎士団はいわゆる雑用係とでもいうべき隊であり、騎士団長に反骨心をもっているだろうとは思っていたがまさか第2騎士団までこちらにつくとは思わなかった。

そしてそんな二つの騎士団に父上は怒りのこもった視線を向けている、まぁ、父上からすれば裏切り行為だろうからな…


「貴様らわかっているのだろうな、この戦いが終わった後貴様らには団長室に来てもらうぞ…」


怒りながらも怒鳴りつけずに最低限の自制心はもっているようだ。

とはいえ、ここで負けでもすれば父がこの2つの騎士団に何を言うかわかったものではない……


「父上、賭けをしましょう俺が勝ったらこの2つの騎士団を不問とする、俺が負けたら1騎士としてやり直すでもなんでも言うことを聞きましょう」

個人戦で一度こちらが勝負をうやむやにされているのだこちらから持ち掛ける賭けを逃げるのは貴族のプライドが許さないだろう。


「……よかろう、もし勝てたならな」

父はそのまま俺から離れていく、その後ろには6つの騎士団がついていく

俺のもとには第2と第8の騎士団が残り俺との作戦会議をするために膝をつき待っている。


「作戦などない、正面から力でねじ伏せるお前たちと俺ならできるはずだ」

俺の言葉に第2騎士団は顔を変えずにただ熱い決意をみなぎらせた視線を第8騎士団はにやにやとした顔をしながらこちらを見てくる。


「父は転生英雄ユウはこれから数年以内に魔王が復活すると考えている、魔王が復活すれば魔王軍との戦争になるだろう、その時騎士団は誰よりも前に出て敵を倒さなければいけないのだ、ゆえに我々騎士団が惰弱であることは許されないのだ、ここで父上と残り6騎士団を叩きのめして強く、誇りある騎士団に生まれ変わるその為にお前達の力をすべてここで発揮せよ、この一戦こそが将来の王国を左右する大一番であると理解せよ!!」


俺の言葉に第2と第8の騎士団が応と答える。

養父は今頃王国を出て魔王との決戦に向けて何かをしているのだろう。

だが転生英雄である養父が魔王を倒すまでの間に王国を守るのは自分たち騎士団なのだ。


俺たちは養父から英雄から王国を守る役目を任されたのだそれは命に代えても果たさねばいけないのだ。


「勝つぞ!王国騎士団死力をつくせ!」

「応!!」


この後俺は父親と6つの騎士団をしばきたおし、父親から騎士団長の地位も受け継ぐことになるのだ。



====

Q第2騎士団なんでハルトについたの?

A転生英雄のファンだから(大体これで片付く世界)

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