ルーの物語5
その日をルーが苦手に思っていることを、あたしははじめて知った。
毎年、みんなが集まるあの日。
意外だった。そういう素振りはなくて、みんなと会うことは、楽しそうに見えていたから。
次回の予定について、ステフさんからメールが届いていた。
「本当は、正直に言ってしまえば、僕は行きたくないと思う」
「どうして? みんな来るのに、会いたくないの?」
「それは別の話だよ。僕はできたらあの日はひとりでいたい。静かに過ごしたい、そっと放っておいて欲しい、そういう事」
哀しみ方はそれぞれ、母さんがそう言っていた。ルーはきっと「誰かと共に」ではなく、「ひとりで」なのだ。
「でも、エリンが珍しく強く主張したんだ。モーリスは、みんなが元気にしているところ、楽しく集まって過ごしている姿を見たいはずだからって。きっと見てるはずだって。姿は見えないけど、来てるかもしれないって。来なくてはダメって、僕は言われた」
「母さんのアイデアだったのね」
「うん、だから何も言えなくなった。モーリスの最後の時間を支えたのはエリンで、彼の気持ちを理解していたのは彼女だから」
あたしは目を見張った。
「そう……だったの?」
ルーは本当はそこまであたしに言うつもりはなかったのだろう。少し困った顔をした。
「あっ、いや、この話は今するつもりじゃなかったんだ。今度……」
今はそのときじゃないと思ったのだろう、そこで言い直し、
「いつか、話すよ。ステフにはふたりで行くと返信しておいて」
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