ルーの物語7

「ノヴァ、そろそろ支度しない?」

 あたしは母さんに促され、立ち上がった。ふりかえると、エヴァもルーの腕を取っているところだった。

「ラディおじさん! ちょっと来て」

 エヴァは無理矢理、控室へ引っ張って行ったけど、そのあと、大変だったらしい。

 聞いた話によると……


 *


 部屋に入るとすぐ、グラントさんがいて、

「ラディ。はい、これに着替えて」

「え?」

 それは写真撮影のときに着たスーツで、ルーは状況を察したらしい。 

 エヴァが持ってきた大きな荷物はあたし達の服で、撮影のあとそのまま家にあったのを運んできてくれたのだ。


「うわ! 何をさせるつもりだよ!」

 エヴァの腕を振り切って逃げ出そうとして、ふたりにおさえられ、結局、グラントさんが後ろから羽交い締めにした。

「グラント、離せよ!」

 エヴァがシャツのボタンを外し、ベルトに手をかけたところで、身体をよじり、

「バカ! 何するんだよ! やめろって。わかった、わかったから。自分で着替えるから、離してくれ」

 やっと、ついにあきらめた。


 タイを結び、上着に手を通しながら、

「何でこんなことしなきゃいけないんだ。」

 文句を言っているルーに、

「おじさん、式をやってないでしょ?」

 エヴァが胸にブートニアをつける。

「僕はこんなこと、やって欲しいなんて頼んでないし、聞いてない!」

「ラディ」グラントさんがピシッと言った。「せっかくのみんなの気持ちなんだから、ありがたく受け取ったらいいだろう?」

「ああ、もう……」


 

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