ノヴァの物語6

 それから数日間、あたしは母さんに相談したくて、機会をうかがっていた。

 今夜は当直で、父さんはいないはず。夕食のとき、思いきって切りだした。

「母さん、相談があるんだけど……」

 母さんは笑って、

「ラディさんとのことでしょ?」

 そう言ったので、あたしは驚いた。

「どうしてわかるの?」

「わからない方がおかしいでしょ。ディーは鈍いから気がついていないと思うけど。あなたの気持ちはずっと変わらなくて、それをラディさんの方は冗談混じりにして、今までずっと避けていたのよね。で、ついに覚悟して受けとめてくれたって、そういうことじゃないの?」

 その通りで、すべてお見通しだ。


「母さん、それじゃ、あたしから何の説明も要らないじゃない」

「はい、前からわかってました」

 あたしは母さんには、かなわない。

「それで、父さんにどう話したらいいと思う?」

 それが大問題だった。

「どんなタイミングで言っても、あの人はきっと動揺して、うろたえまくるから同じだと思う」

 バッサリ切り捨てる母さん……。父さんをちょっぴり気の毒に思った。


「だからいっそのこと、この家を出てラディさんの部屋に行ったらいいんじゃない?」

「ええっ? 母さん、大胆過ぎると思うけど……」

「あら、どうして? どっちにしろ、あなたは入学したら、家を出るつもりなんでしょ。少し予定が早まるだけだし、ラディさんの所なら通学に便利だと思うし」

「でも……!」

「引っ越しのついでに言ったらいいんじゃない?」

「父さん、それで納得するかな……」

「納得は、しないと思う」母さんはあたしの不安そうな顔を見て、「ノヴァ。私はあなた達を応援するから。大丈夫、あとは私がディーをフォローします。あなたは自分の思う通りにして」

「ありがとう、母さん」

 母さんが味方してくれるなら、心強いと思った。


 

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