ノヴァの物語12

 翌朝、あたしはルーに起こされた。

「ノヴァ、そろそろ起きないか。もうすぐ朝食ができるよ」

「……ん」目を開けると、

「おはよう」

 ベッドに腰かけてあたしをのぞき込んでいる彼と、目が合った。

「おは……」

 言いかけて、あたしは急に頬の熱さを自覚して、毛布にもぐり込んだ。ルーはすっかり身支度を整えていて、エプロン姿で、あたしはというと、その……。昨夜のままだったから。


「ん? どした?」

 あたしは目から上だけ毛布から出して、

「なんだか急に恥ずかしくなって……」

 ルーは小さく吹き出した。

「今さら何で? 僕は生まれたときから君を知ってるし、お風呂に入れたり、オムツを……ぶっ!」

 あたしは枕をぶつけて、最後まで言わせなかった。

「意地悪。オムツを替えたのは僕だ、とか二度と言わないで。よけいに恥ずかしいじゃない!」

 毛布を巻きつけて起き上がり、あたしはムゥッとふくれた。


 ルーは笑いながら枕を拾い、あたしの頭に手を置いて、

「ごめん。ほら、もう機嫌直して。君の好きなフレンチトーストを焼いてあげる。早く着替えておいでね」

 そう言うと、部屋を出ていった。


 彼は今でもこうしてときおりあたしを子供扱いする。


『おじちゃま、あたし、これ好き! ねぇ、また作って!』

 ——朝食を頬張る幼いあたし。

 ふわふわのフレンチトースト! いちばんのお気に入り。

 そして、あたしはあっさりと降参してしまう……。


 

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