ノヴァの物語13

 あたし達はパートナーとして正式な手続きを済ませた。

 リサ姉さん、メグ姉さんからは、おめでとうメールとお花が届いた。ルーにも、グラントさん、ステフさんから連絡が来てた。


 エヴァにはビデオ通話で報告したけど、もう知っていた。

「あ、母さんから聞いたんだ。僕も連絡しようと思ってたところ。おめでとう、ノヴァ」

「ありがとう」

「しかし、ラディおじさん……ああ、もうおじさんじゃないのか、父さんの義理の息子で、僕の義理の兄?! にあたる関係になるの? うわー、複雑だなぁ」

「エヴァ、それ、絶対に父さんの前で口にしたらダメだからね。絶対、だよ」

 エヴァは笑って、

「あはは、そうだよね。あー、もう面倒くさいから、僕はそのままラディおじさんというけど、おじさんはやっと決心したんだ。良かったね」

 あたしは驚いた。

「エヴァ、知ってた……の!?」

「何? ノヴァのおじさんへの想いのこと? おじさんは今までは応えられなかったから、冗談にしていたんでしょ?」

「そう……なんだけど」

「双子だからわかります、というのはウソだけど」

 エヴァは小さく舌を出した。

「僕はずっと、ふたりがいつか結ばれるようにと願っていたよ。だから、僕も嬉しい」

「ありがとう、エヴァ」

「ところで、父さんとおじさん、大変だったって聞いたけど? 父さん、大丈夫?」

 あたしは苦笑した。

「ああ、もうそのことは、今、思い出したくもないの。今度教えてあげるけど。父さんは元気よ。今はね、花嫁の父として悩んでる」

「どういうこと?」

「あたしのドレス姿は見たいけど、花嫁の父役は絶対にやりたくないんだって。ルーの方も今さらこの歳で礼服を着て、みんなの前でさらし者になるのは勘弁して欲しいと言ってて、もうふたりとも面倒くさいこと!」

 エヴァは、目をパチパチさせた。

「おじさんのこと、ルーって呼んでるの?」

(あ、しまった。つい、出てしまった)

 あたしは少し赤くなって、小さく言った。

「うん、そう。ミドルネームがルーモス、だから」

 エヴァはクスクス笑いをこらえながら、

「さすがに今からみんなと同じように呼ぶことはできないよね。それで? 結局、どうするの?」

 あたしは気を取り直して、

「式もパーティーもしないつもり。写真くらいなら、賛成してもらえるかと思うんだけど」

「あ、それじゃ、ステフさんにお願いしたら? 僕、グラントさんとリサ姉さんのアルバムを見たことがあって、ステフさんが贈ったと聞いたよ」

「ホント? お願いできるかな?」

「今度、聞いてみるね」

「ありがとう。お願い。そのときは家族写真も一緒に撮りたいから、エヴァも来て」

「わかった。じゃあね、ノヴァ。おじさんによろしく」

「うん、またね」



 ステフさんは自然な表情の素敵な写真を撮影してくれた。

 あたしは白いミニドレス、礼服を嫌がったルーはダークスーツを着た。

 あたしひとりの写真。あたし達ふたりの写真。

 父さん、母さん、エヴァ、あたし達、家族みんなでの写真。

 ……たくさんの写真だった。


 素敵なアルバムが届いた。

 最後のページにはサインがあって、それは本名だった。

「ステファニー・フューチャー」と。


 いつかあたし達の子供達に見せる日が来るだろうか。


 子供の話をしたら、ルーは、ハッキリ答えてはくれなかった。

「そうだなぁ、子育ては経験済だからなぁ……」

 そのあとに続く言葉は何だろう……是非? いや、もういい?

 自分以外の事情をいろいろ考えてしまうのだろうと思う。優しい人だから。

 でも、家族が増えるのは、ルーにとって嬉しいことだと、あたしは知ってる。

 あたし自身は自然に任せればいいかなと思っている。

 望んで得られるものもあるし、望んでも、どうしても手に入らないものもあるから。


 

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