ノヴァの物語3

 あたしはこれからどうしたらいいのか、わからなかった。


 リハビリは順調だった。

 日常生活に問題はない、趣味でサッカーをするのなら可能だろう、でもプロ選手としては無理だ。プロというのは、魅せるプレーでお金を頂くということだから。


 夢をかなえたあとは、どうするのだろう。

 また次の新しい夢に向けて進むのだろうか。


 夢が破れたときは、どうするのだろう。

 また新しい別の夢を見つけて進んでいくのだろうか。

 

 だったら、どっちだって同じことで、そんなふうにいつも前を向いて、進んで行かなければいけないのだろうか。


「おーい、ノヴァ! ランニングに行くぞ」

 おじちゃまが呼んでいた。

「待って。今、行くから」

 自分の部屋にいたあたしは立ち上がった。


「ストレッチ、しっかりやっておいた方がいいよ」

「うん」

 おじちゃまは自分のトレーニングのためと言ってるけれど、あたしがひとりではさぼりがちなリハビリに、こうしてつきあってくれている。

 その日、一緒に走りながら、

「なぁ、ノヴァ。そろそろうちのチームのコーチを手伝ってくれないかな」

 あたしは首をふる。

「ごめん。まだサッカーボールも見たくない気分」

「そっか……。まぁ、いつでもかまわないから。待ってるよ」

「うん」


 おじちゃまは少し白髪が増えたけど、若々しいところは変わらない。あたしに優しいところも。


 

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