エヴァの物語6

 ラディおじさんがエアカーを運転し、僕は助手席に座った。後ろに花束を抱えた母さんとノヴァ、たぶん父さんは、その後ろでいつものように寝てるのだと思う。


 シティの郊外の、遠くに海を望める小高い丘、そこに墓地があって、墓碑の前には既に3つの花束が供えられてあった。僕達が来たのが最後で、他の人達はもう待ち合わせ場所のお店に向かったのだろう。


 幼い頃、墓碑名に自分の呼び名と同じ名前があるのをはじめて知ったとき、僕はかなりうろたえた。

「モーリス・エヴァ・ジーン」と。

 僕の名前はそのミドルネームからもらって名付けられたと聞いたけど、ここに来るたびに、会うことのできなかったその人から、何を受け継いでいけばいいのだろうと、少し苦しくなる。

 エヴァという同じ名前に込められた両親の想いを、重荷に感じてしまう。


 だから、僕はこの日が苦手だ。


「みんな元気だよ」

「子供達、ふたりとも大きくなりましたよ」

 その人の身体はここに眠っていても、魂は別の場所にあるというのに、どうしてみんなそうやって話しかけてしまうのだろう。

 僕は両親の言葉を背中で聞きながら、少し離れて、遠くに光る海を眺めていた。


 足音が近づいて、肩に手が置かれた。

「良い眺めだよな、ここ。ありがと。毎年付き合ってくれて」

 僕は、一緒に並んで海を見るラディおじさんの横顔を見た。僕の気持ちをわかってくれているのだと思う。

「モーリスは君の両親にとって、特別な大切な人だから。エヴァはまだ大切な人を亡くすという経験がないからわからないかもしれないけど、心のどこかに留めておいてあげて欲しいな。いつかふたりのその話をしてやるよ。長い話になるけどね」

「……うん」


 

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