エヴァの物語7
食事会をするお店には、もう他のみんなが揃っていた。父さんの友人のステフさんが入口で待っていて、迎えてくれた。
「ステフ、準備してくれてありがとう」
父さんが言って、僕とノヴァを前に押し出したので、僕らはそろって挨拶した。こういうときは、双子だからか自然とタイミングが合う。
「「こんにちは」」
「うわ、ふたりとも1年見ないと成長するね〜」
これは毎回、誰かに同じようなことを言われる。
「ノヴァの背丈はもうリサを追い越すんじゃない?」
僕達は席に着いて、ヴァン所長の短い挨拶のあと、恒例の食事会がはじまった。毎年、出来るだけ都合を合わせて、父さん達はこの日に集まることにしている。
食事が一段落すると、社交的なノヴァはさっそく女子トークの輪に入った。
(ノヴァは普段から、リサ姉さん、メグ姉さんとメールグループでやりとりしているらしい)
小さい頃は僕も一緒に母さんのそばにくっついていたけど、今はもう女子トークは無理だ。父さん達の昔話にもついていけない僕は、いつものようにすみっこの席でタブレットをいじっていた。
「エヴァ、調子はどう? 順調に学習が進んでいるみたいだね」
僕の隣にグラントさんが座った。僕を子供扱いしないでくれて、父さんの友人の中ではいちばん『落ち着いた大人』って気がする。
「グラントさん、この課題なんですけど……」
僕の学習課程を気にかけてくれて、難しい問題を教えてもらえるのはこの人だ。
「ああ、これはね……」
そのとき、たぶんトイレから戻る途中で通りかかったのだろう、ノヴァが後ろからのぞきこんで、
「こんなところでも勉強してる! 信じられな〜い」
そう言って通り過ぎたので、僕は顔をしかめて、舌を出してやった。
ノヴァは本当は決して勉強が嫌いなわけじゃないことを、僕は知ってる。サッカーを続けるために勉強も頑張っているのに、周りには努力している姿を知られたくないと、見せないんだ。
「エヴァ、このあとの予定は? また船を見に来る?」
グラントさんの方からそう言ってくれたので、今回もお願いしようと思ってた僕は嬉しくなった。
「はい、是非!」
グラントさんは立ち上がり、僕の肩を軽く叩いた。
「それじゃ、あとで。がんばってね」
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