エヴァの物語8
僕は、ノヴァがいきなり
「おじちゃま、だーいすき!」と、座ってるラディおじさんの後ろから抱きつくのを目にした。
手にしていた飲み物をこぼしそうになって、
「うわっ! ノヴァ、あぶないな」
おじさんはグラスを置いて、後ろから首に抱きついているノヴァの腕を外し、隣に座らせた。ノヴァはなんだかぼーっとした赤い顔で、目がとろんとしてる。
「あ! 酔ってるな、お前。誰だよ、ノヴァに呑ませたのは?」
おじさんが周りを見まわすと、離れたところで、リサ姉さんとメグ姉さんが首をすくめて、目をそらした。
おじさんは、ノヴァを支え、自分の膝に頭をのせて寝かせた。
「ほら、ノヴァ。ここに」
「あー、もう、ノヴァ! しっかりして」
僕が揺り起こそうとすると、おじさんは「いいから、そのままで」と、片手を上げて止めた。
ノヴァが小さくつぶやくのが聞こえた。
「あたしがパートナーになって……あげるね」
「はいはい、わかったから。寝てなさい」
おじさんが脱いだ上着をかけて、ぽんぽんと小さな子供を寝かしつけるみたいに軽く叩いているうちに、ノヴァは寝息をたてて、寝入ってしまった。
小さい頃、ノヴァはよく「おじちゃまと結婚してあげる!」と言っていた。最近では「ヨボヨボのおじいちゃんになったら、あたしが面倒みてあげるからね」と憎まれ口をたたいていた。
おじさんはいつも真面目に取り合わないけど、ノヴァが半分以上、本気で言っているのを僕は知ってる。ノヴァが心を許して、無防備な自分を見せて甘えられる相手は、ラディおじさんだけだった。
そばで見ていたステフさんが、クスッと笑った。
「ラディは慕われてるね。まんざらでもないんじゃないの?」
そう言われて、おじさんは即座に否定した。
「冗談でもやめてくれよ。ノヴァは娘みたいなものだし、これだけ歳が離れていたら、もう犯罪だろ。それに、ディープをお父さんと呼ぶのを想像するだけで、勘弁して欲しい」
そこに父さんが来た。
「僕だってラディに『お父さん』なんて、呼ばれたくない」
父さんはノヴァの様子に、
「全くしょうがないな。ステフ、僕達はそろそろ失礼した方が良さそうだよ」
そして、僕を見た。
「エヴァは? 今日も船に行くんだろう?」
「あ、うん」
さっき父さんとグラントさんがふたりで話をしているのを、僕は見ていた。父さんはそれで知っているんだ。
「じゃあ、明日、迎えに行くとき連絡するから」
「わかった」
ラディおじさんは、ヴァン所長に声をかけた。
「所長! 家まで送りますよ」
座ったまま、居眠りをしていたヴァン所長がハッと目を開けた。
おじさんはノヴァを抱き上げようとして、
「重たくなったな。こいつ」
結局、父さんと僕が手伝って、おじさんはノヴァを背中におぶった。今日、ノヴァがパンツスーツでよかったと、僕はひそかに思った。
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