エヴァの物語11

 何度もこの船を訪れている僕は、ふたりの私室以外、どこに出入りしても構わないと言われている。


 僕が操縦室から、眠ることのない宇宙港のさまざまな明かりを眺めていると、リサ姉さんが入ってきた。

「きれいね。いつも見慣れていても、つい見てしまうものね」

「ええ」

「エヴァ、なんだか元気ないけど、何か悩んでる? 将来のこととか?」

「そう、ですね。ノヴァと違って、僕はまだ何をしたいのかよくわからないから」

 もうすぐ僕もミドルスクールの課程を終了する。そのあとは……。まだ決めていなかった。


「そういう話をご両親とはしないの?」

「……ええ」

 僕は両親の前だと、こんなふうに素直にはなれない。

「グラントさんもリサ姉さんも、僕と同じ歳の頃にはもう操縦士を目指していたんでしょう?」

 リサ姉さんはうなずいた。

「そうね。操縦士になるにはとても長い時間がかかるから、早くはじめることになる。でも、人それぞれ、でしょう?」

リサ姉さんは続けた。

「エヴァ、例えば、私は満点の星空が好き。でも、ユーリは暗い静寂に満ちた宇宙空間の星あかりが好きなの。心が動くものがあったら、踏み出してみたら。決めてから動き出すのもいいけど、動いているうちに世界が広がって見えてくるものもあると思う。」


 いつのまにかグラントさんも、そばに来ていた。

「エヴァ。君には君の良いところがたくさんあるよ」

「ありがとう……ございます。僕、AIルームに行ってます」


 父さんの友人というだけで、僕を温かく見守って良くしてくれる人達、僕には同年代の友達がほとんどいないから、父さんをうらやましいと思うのはこういう時だ。


 

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