四通目 謎な男からの手紙
その手紙は少しフチの焦げた大き目の封筒に入っていた。差出人も宛先も書いていない。いつ郵便受けに入れられたのかも分からない。ただ青木が引き抜いた新聞の間に挟まっていたのだ。
青木はその手紙を何気なく開封して、後悔した。なかったことにしたかったが、一度読んでしまった文面は目に焼き付いて消えはしない。青木は震えながら手紙をフチの焦げた封筒に重ねた。
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前置きはナシだ。
おめーを狙ってるやつがいる。
なんで分かったとか、どうして教えてくれるのかとか、くだんねーこと訊くのもナシだ。どうせおれが答えてやれることなんざ小指のさきっぽほどもねえ。
おれがだれか、なんてのも訊くなよ。
おめーはただおれの忠告を聞いておけばいい。
言っておくが、警察に駆け込んでもムダだぜ。
上層部にグルになってるやつがいるからすぐ握りつぶされるだろうし、ヘタすりゃ署内で殺られっちまうのがオチだ。
どうせおめーのことだからのほほんとしてやがるンだろうが、これはマジだ。今回だけはおれの言うことを信じろ。
この件に関しちゃ、おれはおおっぴらに動くわけにいかねえ。利害がごちゃごちゃに絡みまくっていやがるからな。
とにかくおれからの忠告はふたつだ。
あの件からは手を引け。
しばらく家ンなかにでもひき籠ってろ。
といってもどうせおめーは聞かねえンだろ。
なにか言いたいことがあるなら聞いてやる。助けがいるなら、言え。
おめーのことはどうでもいいが、おめーが死ぬと、泣くやつがたっぷりいやがンだよ。まったくめんどうかけやがって。
明日使いをやる。そいつに返事をわたせ。
しちめんどくせーことに巻き込まれやがって、ま、おめーらしいけどな。
せいぜい長生きしろよ。
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青木は「巻き込まれた」らしい「警察に駆け込」みたくなるような「しちめんどくせー」「あの件」に全くもって身に覚えがなかった。なかったが自分の命は非常に惜しいので、どういう意図があるにせよ親切にも忠告してくれる手紙の言う通り「家ンなかにでもひき籠って」いようと思った。
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