第15話 いやらしい笑みを浮かべる所長
軍用飛行機が所せましと並んでいる。
圧巻である。所⾧に言ったプラモデル少年の話は本当である。
私は少年の頃に戻ったような気がした。
戦争は何があっても起こしてはいけない。
ただ、制作者の「飛ぶ姿が美しい飛行機を作りたい」と言う魂がこもった作品には心を打
たれる。
誰も殺傷のための飛行機を喜んで作ったりしてはいない。
おそらく無理やり作らされているのだろう。
暫らくして私はミサイルは作ってないのですか?と単刀直入に聞いた。
所⾧は
「作ってませんなあ」
とお茶を濁す。
こうなれば仕方ない所⾧の強欲さにつけ込んで心づけを握らせた。
こんな事はしたくはないが、妻を救出するために耐え忍んだ。
所⾧はいやらしい笑みを浮かべ
「あちらへどうぞ」
と別の倉庫へと私を導いた。
こちらの倉庫は先程に比べて警備が厳重で衛兵が門番をしている。
衛兵は敬礼をして私達二人を通した。
トレーラーに載ったミサイルの山である。
「この国は一体どこに向かっているのか?」と銀総書記の狂気に身の毛がよだつ。
広い倉庫の遥か彼方で何やら話し込む二人の人間が確認できる。
人の気配が無い吹き抜け廊下にポツンと人がいると存在が鮮明になる。
所⾧のミサイルの説明も上の空で私はその二人を凝視した。
「ボーンダルさん、聞いてますか?」
「は、はい」
と私は心ここにあらずを見透かされた。
その時、所⾧は
「まずい、いるじゃないか」
とホングリ語で言った。
私は「まずい、いるじゃないか」と言う程度のホングリ語は多少勉強してきたので聞き取れた。
私に目撃されてはまずい人間…そう、それは妻のカロリーナだ。
「失礼します」
と所⾧に言って3階の吹き抜け廊下にいる二人の方向に走り出した。
「ボーンダルさん行っちゃだめだ!」
という所⾧の声を無視して私は全力で駆ける。
やっと顔が認識できる位置まで来た。
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