第16話 2メートル超えの大男、チャン•ホンマン
その見覚えのある優しい顔…妻に間違いはない。
「カロリーナ!」
と叫ぶと妻はこちらを向いた。
その表情は驚きで固まっていた。
妻は研究者用の白衣を着ている。
「カロリーナ、今行くからな」
と声を上げて階段を登り始めた。
カンカンカンと言う鉄の金属音を聞きながら私は懸命に駆け上がる。
階段を登る途中、の足を掴む者がいる。
「チャン・ホンマン、そのままそいつを、引きずりおろせ!」
と所⾧が言う。
チャン・ホンマンは優に2メートルは超えるほどの大男だ。
片足を掴まれた私は逆足で大男を蹴ったがびくともしない。
それどころか今度は両足を掴み私を引きずり下ろそうとする。
階段に必死で掴まるがそれ以上の力で引っ張られ私はしたたかに階段に顎をぶつけた。
顎の骨が砕けたような痛みだ。
そこから体を反転して態勢を立て直しもう一度蹴りつけた。
大男は転がり落ちて行った。
これで登れると思ったが膝が言うことを聞いてくれない。
階段にしがみつきじっとしているしかなかった。
階下を見ると転げ落ちた大男が登ってくる。
こいつは不死身かと私は大男の生命力にぞっとした。
チャン・ホンマンは優に20段はある段差を転げ落ちたのにピンピンしている。
私は言うことを聞いてくれない膝を屈曲伸展させているがズキンズキンと痛みが走る。
痛みの限界を越えて伸展したら「ごくん」という音がした。
どうやら脱臼していた膝関節のジョイントが噛み合ったみたいだ。
いける、動けると思った私は、また階段を登り始めた。
どんどん大男が追いついてきた。
「やれ!チャン・ホンマン、スタンガンを使え」
と階下から所⾧が叫んでいる。
スタンガン?電撃銃のことか?私は身の毛がよだった。
やられては敵わないと私は全速力で駆け上る。
だが、大男はすぐそこまで迫ってきた。
⿁の形相とはこの事だ。
この世のものとは思えない怒り心頭のオーラを発しながらチャン・ホンマンは階段を駆け登ってくる。
私は一足先に三階の廊下に着いた。
どうせ襲ってくるのなら、こちらが上にいた方が有利だと思い待ち伏せた。
あと三段で登りきれるという所で私は顔を出した大男の顎に強烈な蹴りを食らわせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます