第3話 厳しいけど優しい女の先生

今まで、娘と向き合って来なかったからツリーの飾り付けのときにケンカになったと私は反省している。

「頑張ってるエレナがみたいんだよ」

と私が言うと

「変なパパ」

と言ってからお気に入りのボービー人形にも

「変なパパだよね~」

と言った。

私はカンフー映画は大好きだがやりたいとは思わない。

オタクである。

体を動かしているより本を読んだり音楽を聞いている方が好きだ。

でも二人きりなんだから娘の事もっと理解しようと思う。

「さあ着いたよ、エレナ」

「パパありがとう」

とエレナは車から降り、道場の入り口まで一目散に駆けていった。

ウキウキ感が体から溢れ出している。

小学二年生はまだまだ無邪気だなと思う。

今日から稽古を見学する私を道場の入口から呼んでいるエレナ。

「パパ!早く早く」

と手を振っている。

第二次世界大戦中にできた防空壕を改装した道場は地下にある。

表には⾧拳螳螂門と書いた看板がかかっている。

カマキリと拳の絵がロゴになっているようだ。

「カンフーの先生はどんな人?」

「厳しいけど優しい女の先生」とあっけらかんと答えるエレナ。

送り迎えをずっと妻に任せっきりだったので、今日初めて馬先生に会う私であった。

地下へと向かう階段を降りていくと、ひんやりした空気が鼻の奥に入ってきて心地良い。

なんだか神聖なものを感じる。

降りきった所に開き戸のドアがある。

エレナは元気よくそれを押して中に入って行く。

私も後ろからついて行った。

「こんにちは馬先生」

「こんにちはエレナちゃん」

「今日はパパを連れてきたよ」

と私を紹介してくれた。

「初めまして、ヤロスラーヴ・ボーンダルと申します。いつもエレナがお世話になっています」

「初めまして、馬香香です。こちらこそエレナちゃんにはいつも元気をもらっていますよ」

と答える馬先生。

どうぞこちらにおかけになって下さい…と馬先生にうながされ私はソファーに腰掛けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る