第2話 ママのいないお家

「エレナそこのサンタさんの飾りを取って」

「はい、パパ」

とエレナはクリスマスツリーの飾りを手伝ってくれている。

「今度はそこのお星さまを取って」

と言ったとき急いで走ってきたものだから、エレナは転んでしまった。

床に顔を打ち付け泣き出すエレナ。

私は抱き上げてあやそうとしたが、エレナは少しも泣き止まず私の手を振り払う。

「もう嫌だ、ママのいないお家なんて」

と装飾を私に投げつけた。

「仕方がないじゃないかパパだって一生懸命ママを探しているんだ、いい加減にしろ!」

とエレナを大声で叱った。

その声にまた泣き出すエレナ。

私は近寄って行き

「ごめんねエレナ、小学生のエレナに大声出して悪かった」

とそっと抱きしめた。

やっと泣き止んだエレナは

「私も悪い子だったわ」

と言った。

「ママが返ってくるまでいい子でいると約束したのに…」

とエレナは涙を拭いた。

「でもねパパ、約束してくれる?」

「何を?」

「馬先生が言ってた事」

「うんカンフーの先生だね」

と言ったところで二人とも平静を取り戻した。

「大きな人は小さな命を守るのは当たり前って馬先生が言ってたから、怒鳴らないでほしいの」

とエレナは私の目を見つめて言った。

「本当に済まなかった。ママがいない悲しさと不安で心がおかしくなって怒鳴ってしまったんだ、ごめんね」

と言うとエレナはにっこり笑った。

その笑顔に私は涙が溢れた。

良い子に育ててくれてありがとうと心の中で妻に感謝した。

「エレナをカンフー道場に送って行ったら、パパはすぐ近くのショッピングセンターに行ってたけど、これからは見学してもいいかな?」

と車の中で私は言った。

「うん、いいけど…でもどうして?」

とエレナは聞き返してきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る