インスタント•カンフー•ダディ

@J0hnLee

第1話 帰ってきていない日常

日常が帰ってきた。

レシオとの戦争はやっと終わった。

⾧かった。

私はその記録を小説にしようと執筆を始めた。

有名ではないが食べていけるだけの印税は入ってくる、いわゆる「初めて聞いた作家」だ。

私はイクライノを守るために戦うと決意し志願兵になった。

妻と娘を残したまま、戦地に向かう事は辛かったが、少しでも早くあの戦争を終結させたいと思い志願した。

娘のエレナは小学二年生で学校もカンフーの道場も楽しく通っている。

こんな小さい時に戦争を体験するなんてきっと心の傷は大きかっただろう。

私は父親としてその傷を少しでも早く小さくしてあげたいと思う。

娘はすくすくと育っているが、一つだけ帰ってきていない日常がある。

「ただいま、今帰ったよ」

と私は玄関のドアを開けた。

「おかえりパパ、ママはまだ帰ってきてないよ」

というエレナ。

今日は家族3人でレストランに行く約束をしていたのにおかしいなあと私は思った。

エレナはボービー人形で遊んでいて、そのうち帰ってくるでしょみたいに気楽にしている。

「ママから連絡はないのかい?」

「うん、ないよ」

というエレナのそっけない返事に、まぁ連絡できない時もあるよなと私も気楽に新聞を手に取り読み始めた。

夜10時過ぎても妻からの連絡はない。

心当たりの友人や親戚に電話をかけてみたがどこにもいない。

あれから一年、妻はまだ我が家に帰ってきていない。

警察に捜索願いを出してみたが、居所の連絡は無しの礫だ。

今どこにいるのだろう?元気にしているだろうか?ひょっとして…など様々な思いが交錯する。

私の親愛なるそして尊敬する妻だ、きっと何かしら事情があるのだろうと頭を振って不吉な予感を打ち消した。

さすがに元気いっぱいのエレナも意気消沈気味だ。

「ねぇママ!」といつも妻と遊んだりお話したりして毎日楽しそうだったのに、その妻は今、ここにいない。

学校でお友達が「ママ早く帰って来ると良いね」と励ましてくれる…と言っている。

クリスマスツリーを毎年、妻が用意してくれるのだが今年は私がする。

なかなかはかどらない。

要領も分からないし、妻の行方不明に心がざわつく。

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