第3話

「ごちそうさま。相変わらず千華の料理は美味しいよ。いつもありがとうな。」


「何急に…ほら、皿洗うからお皿こっちに出して。」


俺の言葉に驚きつつも千華は褒められたことに嬉しそうな顔をうっすら浮かべていた。彼女なりにバレないようにと思っているのだろうか。そのまま千華は俺の昼食を食べた後の皿を洗ってくれていた。


「ねえ兄さん。」


「何だ?」


「今日入学式だったんでしょ。それで……女子の友達できた?」


千華は皿を洗っていたがその問いを俺にした時、彼女の手は止まっていた。入学式の日はゲームでは入学式の後のクラスでの会話以外、特にイベントは無かったので裏では兄妹でそんなことを喋っていたのか…と呑気に考えていた。


「別に友達とは言えないけど少し挨拶するぐらいならできたよ。いやー嬉しかったよ。何せめっちゃ可愛かったからね。」


俺は頭の中で天王寺と喋ったことを思い出していた。自分の推しが目の前にいるという興奮が多少あったがこれからも会うことになるのだから慣れないといけないだろう。だが俺がそう言うと千華は何故か暗い顔をして、


「…そう。」


と言って皿洗いを再開した。もしかして俺に友達ができたか心配してくれたのだろうか。でもそれだったら何で暗そうな顔をしているのだろうか。


……もしかして、友達ができて俺と遊ぶ時間が減ってしまうのが嫌だったのだろうか。


ゲームでは千華はツンデレ系キャラで趣味が義兄と遊ぶことだった。あんな興味のない感じをしていても、実は一緒に遊びたかったのだろうか。前世は妹がいなかったので嬉しいと思ってしまう。俺は千華の元へ歩いていき、自分より遥かに小さい彼女の頭に手を乗っけて言った。


「心配してくれてありがとうな千華。俺はちゃんと千華と一緒にいるからそこまで心配しないで良いぞ。大切な義妹だからな。」


そう言うと千華は俺を見て顔を赤くしたが、すぐに皿洗いを再開させて、


「…あっそ。別に心配なんかしてない。」


と小さい声で呟くように言った。俺はその様子に可愛らしいなと思いながらもこれ以上は言及する必要もないだろうと自分の部屋へ戻った。








◇◆◇


「兄さんのバカ……鈍感、女たらし。」


私は先程一緒にいた兄さんに聞こえないことをいいことに文句を言っていた。高校に入学したということで兄さんに女との出会いでもあったらどうしようかと心配して声をかけたら案の定兄さんは嬉しそうに学校で可愛らしい女子と会ったと話していた。


思わず洗っていた皿に思いっきり力を込めて握ってしまったが、その後急に兄さんが私の所へ来て頭を撫でながら一緒にいると言ってくれた。


「…大切な義妹、ね、、、」


その言葉は兄さんなりの思いやりだと分かったが、嬉しい気持ちと半々に不服でもあった。自分は義妹としてしか見られてないのかと物申したいところだが、こういうのは時間をかけて意識させていくしかないだろう。


「その時間はいつまでもあるもんね。だってずっと一緒にいてくれるんでしょ?兄さん。」






—————————————————————

ほのかに匂うヤンデレ臭。

次回、原作対策会議。(一人)

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