欠片の双子(15)
町の外れ。
朽ちた廃材は幾多も重なり山となり、新たな生命のよりどころとなる。廃材からはいくつかの植物が生え、豊かな緑を形成している場所もある。
その場所は意外と奥まで続き、
俺は1つの山の前で足を止める。
「なんか見たことの有る形だな」
興味本位に1つの廃材に触れる。
触れた廃材は、
俺の手の中で輝き、
1つのカードとなる。
「《朽ちたゴーレム》ねぇ」
ぶっちゃけ、
カード効果は悪くないが、
単体では使い道に困る奴だな。
それより気になるのは名前の方だ。
(名前からして廃材はウッドゴーレムの残骸)
裏まで残骸が山になっている辺りかなりの量である。
「急速な復興分の廃棄量って感じだな」
(使われて動かなくなったら捨てられるか......)
たかがゴーレムとは言えど、
この廃材の山には思いをはぜてしまう。
森の静寂が続き、
俺がしんみりとしていると、
向こうの方から怒鳴り声が鳴り響く。
「おいッ、ガキが何してやがる!」
「うるさいッ、ちょっと漁ってただけだろ」
「漁ってたァ? ふざけた事抜かすんじゃねぇッ!!」
様子を見ると、
男たちに囲まれ、
中心には殴られる少年。
少年の顔は赤く腫れ、
流石に見ているだけでは、
罪悪感に駆られるレベルである。
(子供じゃなきゃ放置一択なんだが)
そう思いつつ、
俺は足を動かす。
「おいおい、穏やかじゃねーぞ」
「アンタ......町のもんじゃねぇな」
「そりゃあただの観光客だからな」
「ならさっさとどっかに行きやがれッ」
一人の男は強い口調で言い放つ。
だが俺は少年を塞ぐように立つ。
「まあ、子供がなぶられてんだ」
「そいつは殴られて当然のことをした」
「理由は知らん。俺の気持ちの問題だ」
(大人が子供をいじめるのは癪なんでな)
野郎だったら見棄てていた。
ジジババならギリギリ見棄てていた。
綺麗なお姉さんだったら即座に救出だ。
男達はファイティングポーズをとる。
「じゃあ嬢ちゃんが殴られてくれるか?」
「暴力は苦手でな」
俺はデッキに手をかける。
「穏便に宇宙決闘と行こうじゃないか」
「ちっ、狂人風情が」
男は冷静な視線でこちらを見る。
「お前ら引き上げるぞ」
「兄貴、いいんですかッ」
「あんなイカれた奴に構ってられるか」
大人たちは引き上げる。
残されたのは俺と少年。
「大丈夫か、少年」
「アンタの助けがなくたって大丈夫だったッ」
「そいつは悪いことをしたな」
少年は反抗的な声を上げる。
だが視線は別のところを見ている。
(やはり少年もお年頃という訳だ)
ふっと俺が笑いそうになった瞬間、
「──────チッ」
「アイタッ、おまッ」
少年に突き飛ばされ、
俺の視界が空一色となり、
どすんと盛大に尻もちをつく。
(ツンデレにも限度があんだろ)
土ぼこりをパンパンと払って、
起きた時には誰一人とおらず、
俺はため息をつくのであった。
「全く何だったんだあのガキは......ってアレ」
腰のポケットが妙に軽い。
(ここには俺の財布が入っていたハズだが)
車の中でも重みはあった。
町の探索中には重みはあった。
そしてさっきまでも重みはあった。
と、いうことは。
「あのクソガキが」
目を瞑り位置を把握する。
脳内で移動する俺の財布は、
現在進行形でだいたい北上中だ。
◇◆◇
廃れた家。
外壁はボロボロながらも木造で出来ており、窓ガラスはひび割れている。だが、割れた窓ガラスは木で補修してあり、床には塵の一つも落ちていない。
静寂を貫く家に、少年少女の声が響く。
「妹、いま帰ったぞ」
「お帰りお兄ちゃん」
出迎えるは椅子に座った妹。
彼女の足には乱雑ながらも、
奇麗な包帯が巻かれている。
「今日はたんまり稼いで来たからな」
少年は懐から厚みのある財布を出す。
「野鳥の肉だって食えるぞ」
「ワカル、他人の金で食う肉はウメ―よな」
「そうそう、他人の金で────────ッ」
少年は慌てて後ろを振り向く。
そこにいたのは、
白いワンピースを着た、
深窓の令嬢といってもいい女性。
別名、少年が財布を掏った女性だ。
「な、なんでここに」
動揺している少年から
俺はひょいと財布を取り返す。
「実はオメーが奪った俺の財布にはな」
「皇女様特製の防御アイテムが入ってんの」
「しかも無くしても位置情報まで分かる代物だ」
俺は財布から白い筒を取り出す。
(念のためにと渡された代物だったが)
まさか忘れ物防止機能の方が役に立つとは。
ある意味、お節介な皇女様には感謝である。
「お、お兄ちゃんッ」
「いや、妹、これは」
「また盗みをしてッ」
少女は怒鳴り、
立ち上がろうとするが、
足がふらつき倒れてしまう。
「おい、大丈夫か?」
「おい、妹に触んなッ」
俺の耳がキーンとする。
この少年うるさすぎんか。
「足が悪いのか」
「その......これは」
「戦争に巻き込まれた結果だよッ」
怒鳴らなくても聞こえている。
(要は魔王軍が侵攻した時の怪我ってことだろ)
まあ、
気休めになるかは知らんが、
俺が魔王軍に勝った自慢でもしておくか。
「魔王軍なら俺が────」
俺の言葉に反応して、
少年の目に熱がこもる。
「魔王軍じゃないッ、帝国軍だ」
「帝国軍の砲撃に巻き込まれたんだッ」
「家も、親も、街も全部吹き飛ばしていきやがったさッ」
「......悪いことを聞いたな」
「アンタに何が分かるんだッ」
「知らんでも非礼は詫びるのが筋だろ」
俺のすまないという態度が、
少年の怒りに更なる火をつける。
少年は机を叩きつけ、
暴論を俺に叩きつける。
「アンタは今まで平和に生きてたんだろッ」
「俺達がどんな目に合ってるとか知らずになッ」
「別に同情や哀れみを買いたいわけじゃねぇ」
「ただ1つ言いたいのは、アンタと俺では同じ人間でも全く別モノだってことさ」
「だから俺はアンタから金を奪うことに何の躊躇も無いし、それを詫びるつもりもねぇ!!」
言い切った少年は、
ハアハアと息を切らす。
「に、兄ちゃん」
「少年、1つゲームをしねーか」
俺は財布を取り出す。
「俺が賭けるのはこのお金だ」
「じゃあ、あんたは何を望むんだ」
「なら、ここで一泊する権利でも貰おうか」
正直今日中には帰る予定だが、
賭けの対価としてはこのぐらいが妥当か。
「そ、その条件じゃ」
少女の言葉に、
俺は割りこんで口をひらく。
「ついでに俺が使うのは少女のデッキでどうだ」
「なっ───ば、馬鹿にしてんのかッ」
「かもしれんな」
いい感じに少年は俺を睨む。
「どうする? 乗るか反るか?」
「もちろん乗るさッ」
「じゃあ勝負ってな」
聞きなれた電子音が空間を駆ける。
[宇宙決闘法が申請されました]
[賭けが等価であることを確認]
[それでは、よい決闘を]
二人の男は向き合って、
デッキに手をかける。
「「決闘開始ッ」」
姫と少年のバトルが始まる。
◇◆◇
先に言っておくと、
こんな予定では無かったという話だ。
姫は呆れ、少年は諦めれないという様子。
「まだやるか?」
「う、うるさいッ」
現在少年は十連敗を記録中。
俺は無駄に十日も家に泊まる権利を得た。
(まさか、少年がここまで単純だとは)
手加減しても怒られそうだが、手加減しないと......
少年はちょっと泣きそうである。
「あー、妹と2人でやってもいいぞ」
「う、うるさい、俺一人でアンタぐらいッ」
「そのセリフは勝ってから言うもんだぞ、少年」
少年はぐっと息をのむ。
「ほ、施しなんかなくても明日になれば問題ねぇ」
「明日になっても実力は変わらんだろ」
一朝一夕で決闘に強くなられても俺が困るわ。
(いや異世界だからワンチャンぐらいはあるのか)
実は少年が勇者の子孫とか、
実は転生者でした的なオチとか
そんな俺の想像を裏切り、
少年は言葉を紡ぎ始める。
「俺は、明日成人になるんだッ」
「そしたら村の一員として認められて」
「村でやっている仕事で大金だって稼げる」
(成人って言ったって)
少年の背は、
俺の目線より低い。
姫がだいたい160cmだからそれ以下か。
「お前そんな年か?」
「チビだからって馬鹿にしてんのか」
「その通りだが」
むきーとなる少年を、
少女の言葉が遮る。
「元は子供の成長を祝う行事なんですよ」
「ああ、だから子供でも成人なのか」
「一応、明日で2人とも15ですよ」
「まじかよ」
俺の頬が引き攣る。
(まさかこの体より年上だとは)
どいつもこいつも、
美少女、美青年だから
年齢なんてわらんっつーの。
まあ丁度いい理由だな。
俺は右手の財布を握りしめる。
「ほらよ」
「えっと、コレ」
受け取った少女は目を丸くする。
「明日、成人になんだろ」
「おねーさんからの早めのプレゼントだ」
「一度きりだからな、精々2人で大事に使うこった」
そう言って俺は家のドアを開ける。
外の風は冷たい。
空は唐紅に染まり、
夜のトバリが落ちかけている。
帰ったら中将には怒られそうな時間だな。
俺は背筋を震わせながらも、
鼻歌交じりに町を歩くのであった。
───────────
ここまで読んでくださりありがとうございます。
感想をいただけると投稿頻度が上がります。
以下補足
Q.どういう原理でカード化するんですか。
A.モノに何か思いが籠ってたり、主人公が感情を感じるとカード化
します。一般人でも似たような感じでカード化は起こります。
個人差はある模様。
Q.皇女様特製アイテムとは?
A.前方に5秒間のバリアを張る魔法道具。主人公が無防備すぎるので
渡された。買うとめっちゃ高い。
以上補足となります。
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