#43「一体・・・なんなんだギャン・・・!」

ネネが戻ってきた後、レインボーバブル宮殿内へ案内されたぐらたん達。


エントランスホールで、ぐらたん達は国王を待っていた。内装は色とりどりで華やかなものだった。


準備をしてきたネネは軍服姿で、マントを羽織っている。胸紐や肩飾りなど身につけ、軍刀を腰に下げている。


正にナイトである。



「ネネさん・・・後で写真いいですか?」



「ああ、分かった。静かに・・・」



扉からノックする音が響き、



「国王陛下入られます」



扉が開かれると、ネネの動きを見ながら一同は膝をつく。

靴の音が聞こえてだんだんと気かづいてくるのはわかる。



「キミたちは下がってくれ・・・あとは吾輩だけで」



一緒にいた近衛兵たちがいたのだろうか、同行していた者たちが静かに去っていく。



「君たち、表をあげて楽になさい・・・無理に式たりを守らなくていいから」



静かで落ち着きのある男性の声がした。


頭を下げて膝をつくみんなは一斉に立ち上がった。目の前に王がいるが、ぐらたんたちは王の姿に仰天することになるのであった。



「「「「「「!!!?」」」」」」



王様は、


七色に光り輝いている!!!


国王の来ているスーツは、七色の光を発していた。ピカピカと色が変わるように所々明滅を繰り返して光っている。服装のインパクトもあるが、国王の顔は控えめの顎髭と、太い眉毛がハ文字のように下がって、会社帰りの疲れたようなやつれた暗い表情をしていた。


彼の暗い表情と光り輝くスーツのギャップでぐらたんたちはこの緊張した空気に耐えきれない。



「く、くくくくく・・・」「ふ、ふふふふ」「ぐっ・・・・・・」「・・・・・・」「ぶふっ!」「へ~っへっへっへっへっへ!!」



一列揃って笑い声が溢れ出す。やどりんは目を丸くして呟く。



「ゲ、ゲーミング王様だぜ・・・」



ネネはソワソワとぐらたんたちを見て、控えるように促す。みんなは一斉に口に手を当てて堪える。



「陛下・・・ご無礼を・・・」



彼女は目を瞑って頭を下げる。



「構わない・・・。十二国が沈み、神々の加護がなくなったこんな暗いご時世・・・。少しでもみんなが笑顔になってくれればと思ってな・・・」



国王はネネをなだめる。



「キミたちも楽にしてくれ・・・。笑ってくれて良かった。ここにいるみんなは吾輩を避けるんだ・・・・・・」



そりゃそうだ!



カオリはお腹を抑え、息が上がりながらも国王に質問した。



「・・・。失礼ですが、どうしてそんな格好してるんですか?」



国王の暗い表情は変わらないが、少し嬉しそうに答えた。



「もちろん、みんなに少しでも笑顔が戻ればと思ってね・・・。それに、レインボーバブル国王がレインボーで当然だ」



「左様ですか・・・」



ネビロスは静かに答えた。



「よし、気が変わった・・・。場所を変えよう・・・吾輩の部屋に。キミたちにおもてなしをしよう・・・。ついて来なさい」



レインボーバブル国王は扉まで歩いていく。


途中から、国王が足を踏み締める度にチープな音が出た。



「あ、靴のギミックが直った・・・」



国王は足元を見ると再び歩き出す。ぐらたんたちはまた笑いを堪えるのだった。



「・・・!! 一体・・・なんなんだギャン・・・!」



ウンギャンは我慢するような複雑な表情で口を開いた。



いい人ではあるのだが・・・





☆☆☆


王室に招かれたぐらたんたちは席について、シャーベットが振る舞われた。



「我が王国の名物、レインボーアイス。どうかな。本当はソーダ酒が名物なんだが、キミたちにはこれがいいだろう」



七色の光を発して国王は感想を聞いた。


ぐらたんたちはスプーンで掬い口に運んだ。



「ん! 美味しい。パインソーダの味!」



「某は梅ソーダだギャン」



「酸っぱい! レモンだギャン!」



「こりゃ~・・・メロンソーダだな」



「・・・。イチゴがない・・・。これはリンゴソーダだね。七色になってていろいろな味が楽しめるの良いね。あと、口の中にパチパチと弾ける飴が入っていて、よりソーダっぽさが引き立っている」



「それに・・・別の味と一緒に食べることで、また別の味を楽しめるようになってる。七色どころではないな・・・。別々でその味が固まってるだけでなくて、まばらに組み合わさってることで、退屈させない味に工夫されている・・・」



ぐらたんとネビロスが語り出したのをネネは少し戸惑いを見せながらシャーベットを口に運ぶ。



「ぐらたんだけじゃなく・・・ネビロス君まで・・・!」



カオリは笑いの混じった表情で驚く。



「ははは。君たち、なかなかいい線を言ってるね・・・。実は厳密にその味をいろいろ入れてるわけではなく、君たちが感じた味は組み合わせでそれっぽく感じた味に過ぎないのだよ。人によって味が違う。錯覚という隠し味さ」



国王が補足を付け足す。



「「「「「「へえーーーー!!」」」」」」



みんなは感心する中、ネビロスは再びぐらたんにシャーベットを食べさせてもらった。


今度はライチの味だ。



「・・・。奥が深いな!」



穏やかさが戻っていた国王の顔だが、再び疲れ果てた表情に戻る。



「さて・・・。本題に戻ろう。勇者ユーマから貰った物だったね? ・・・非常に申し訳ないが・・・渡せない・・・」



「「「「「「ええ~~~~!!」」」」」」



ぐらたんたちは驚きのあまり、スプーンからシャーベットをこぼした。



「そ・・・それはどういうことですか!!?」



カオリは身を乗り出すが、ネネに制止される。


国王は指を組んで、俯くとため息を吐いた。



「今渡せるなら・・・渡したい。だが、今はできんのだよ・・・。そのことで、ネネ君も呼んだのだから」



「陛下、それは・・・」



ネネが伺う。国王は姿勢を正すと、発光パターンが変わった。



「うん。だいぶ前、キミたちの所にも討伐依頼が来たのは覚えてるね?」



「!? まさか・・・! あの事件に関係していたとは・・・!!」



ネネはあの事件のことを思い出して驚愕する。


国王は静かに頷くと、体が振るえだした。



「ああ。忘れはしない・・・。あの悍ましい事件!!」



ナベリウスの秘術の手がかりになる献上物。国王が渡せないのと、彼が震えるような事件とは・・・。彼が口にした過去の出来事で戦慄した言葉は、かつて人々を震撼させた大戦時代の遺物。天魔戦争、キャラメール砂漠の亡霊だった。

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