#35「へーい! アタシもバーベキューに混ぜて~!!」
レインボーバブル王国メロンソーダ海岸。
北から東に広がる熱帯雨林からくる湿気と潮風による湿気で体感気温は相変わらず暑い。
しかし、澄み渡るように晴れた青い空が広がって清々しい気分になれる。
砂浜のど真ん中、ハンモックチェアーに寝そべる水着姿の船虫はサングラスをかけて日光を浴びていた。色白だった肌はすっかり小麦色に。
「ひひひ! メロンソーダ海岸はいつ来ても落ち着くぜ! こんな綺麗な海はここらぐらいしか無くなったちまったのはさみしーが・・・・・・嫌なことも忘れる最高の場所だ!」
船虫は、脇置いてある小さなテーブルの上にあるパインソーダに口をつける。ひんやりとした酸味と炭酸が口の中に広がるようにしみる。
最高にうまい!
「プハー!! うめー!! コイツに合う何か食いもんがあれば・・・んあ!?」
パインソーダを味わっているところ、何処からか肉の焼ける匂いが漂って行くる。
どこかでバーベキューをしているのか?
サングラスを額へ押し上げた船虫は匂いを頼りにハンモックチェアーを降りて砂浜を歩いてく。アウトドアコンロを囲む一行が見える。
ちぃ~とばかし、いただいちゃおうか!
船虫は舌なめずりをして一行に声をかけた。
☆☆☆
「へーい! アタシもバーベキューに混ぜて~!!」
聞き覚えのある声に反応して、ぐらたんとカオリが振り向いた。
「げ!!?」
「キサマは・・・・・・虫!?」
「キミ、忘れた頃に何処にでも出てくるねー。もしかして台所に出てくる奴のお仲間なのかなー?」
二人の犬神少女の煽りに、船虫は怒りを露わにして地団駄を踏む。
「だまれーー!! アタシは船虫だっつってんだろー!! アタシはめちゃくちゃ綺麗好きなんだ! あんなおぞましいのと一緒にすんな!! その肉よこせや! 出てきやがれ! アクムーンビースト!!」
彼女は麦わら帽子を脱ぐと、頭の上には三日月状の結晶体があった。その結晶体が光り輝くと、巨大なカブトガニ型のビーストが出現した。
「あくむーーーん!」
突然現れた巨大な魔物に、観光客たちが逃げて行く。
「みんな変身だギャン!」
ウンギャンが声をかけ、ぐらたんとカオリ、アギャンが頷く。それぞれイヌガミギアを被ると、変身呪文を唱える。
「「「イヌガミライズ! マジカル・」」」
「イヌガミント!」「イヌガミカン!」「イヌガミルク!」
赤、黄、青白い光から、ミントとミカン、ミルクが現れた。
「始まったか」
やどりんは焼肉を噛み締めながら、端末に手を取る。それを見てネビロスが話しかける。
「戦闘データを取るのか?」
「ああ! 彼女専用の新システムを作るのに必要なんだと。おい! ミントー、魔力の解放は控えろよー! また王都の時みたいにとんじまうんだからな!!」
やどりんは、データの収集を開始し、ミントに忠告をした。
ミントは振り返っては頷いてみせた。
「承知!」
数メートル先で、犬神少女たちが戦闘を開始する。
「あくむーーーん!」
ビーストは砂を巻き上げながら突進してくる。
それに対して、
「ミントエスカッション!」
ミントは前に出てエスカッションを展開し、敵の攻撃を阻む。ミントの背後から左右にミカンとミルクが飛び出す。
「ミカンクナイ!」
ミカンがクナイを投擲して、ミルクが二丁のブラスターを乱射する。
しかし、光のクナイとブラスターのビームはビーストの硬い甲羅によって弾かれた。
「なんて硬さ!?」
ビーストの防御力にミカンは驚く。
すると、ビーストは槍のような尻尾を薙ぎ払い、ミカンとミルクを蹴散らす。
「ギャン!」「きゃあ!」
そして、尻尾の槍ドリルのように回転して、エスカッションを展開するミントに目掛けて刺突する。
ミントエスカッションが容易に貫かれた。
「うわ!? あぶな!?」
貫通した尻尾を間一髪、ミントは避けた。
そして、そのまま盾のポジションを変更して高速回転させ、ロッドを振るう。
「ミントスラッシュ!」
ビーストの甲羅に斬りつけるが、火花を散らし、刃は通らない。
「そんな! どの攻撃も効かないギャン!」
犬神少女たちが苦戦している様子を見てウンギャンは驚愕する。
「へへん! どーよ。防御力なら最高に自信があるぜ!」
船虫は両手を腰に当てて、得意げに叫ぶ。
「・・・だったら、これをくらえギャン!」
ウンギャンはぐらたんのリュックからロッド状の火器、新たに支給されたエンゲルファウストロケット砲を発射した。
「ちょ・・・」
船虫は慌ててビーストから離れる。威力調整などしていない。それを見てミントもミカンやミルクに呼びかける。
「退避! 退避~!!」
犬神少女が散らばるようにその場から退散。
赤い軌跡を描く魔弾はビーストに炸裂、大きな火球はビーストを飲み込んだ。甲羅の破片が辺りに勢いよく飛び散るのであった。
爆炎が晴れると、そこにはカニのようなクモのようなほっそりとしたビーストが居た。恥ずかしいのよくわからないが、ハサミのような手で顔を隠して縮こまっている。
伏せていた犬神少女たちは頭を上げる。被った砂がサラサラと頭から落ちていく。
「びっくりした~!」「ウンギャンめ・・・。でも、でかした!」
安心はしていられない。周囲に飛散したマナ粒子のせいか、ビーストの甲羅が見る見るうちに再生していく。折角ウンギャンが作ってくれたチャンスを逃すわけにはいかない。
「ここは私が」
すぐさまミルクがブラスターを構える。
「イヌガミック・ドライブ! ・・・ミルキー・ホット・バスター!!」
ブラスターから放たれた極太の光線がビーストに照射される。
ビーストはリラックスした表情で浄化された。
またやられた船虫はワナワナと握り拳を作り、
「くううーーーー!! おのれーーー! 少しくらいお肉分けてくれてもいいだろおーーー!! ちくしょー!!」
船虫は海に走り去っていった。派手な水しぶきを上げながら海面を走って行く。
ミントは攻撃する間も無く、彼女が走り去った海をただ眺める。
新天地で早速、ナイトメアユニオンと会敵。これは新たな大地での戦いの幕開けなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます