#30「まだ手はある!」

エクレア達と合流した犬神少女達は、階段を下りていく。


その中、ミントはエクレアに聞いた。


「エクレアちゃん、ネビロス様を・・・銀髪のお兄ちゃんを見なかった?」


ぬいぐるみを抱えたままエクレアは答える。


「ぐらたん・・・そのお兄さんのことなんだけど・・・・・・」


その時、階段を降りるうちにゾロゾロとアリ型のビーストが多数駆け上がってきた。


「!!! まだ湧いて出てくるギャン!」


ミルクはブラスターで応戦する。


「ダメだ・・・・・・戻ろう!!」


国王は再び階段を駆け上がっていった。


「「「「「「同意!」」」」」」


みんなも続いて駆け上がる。




再び王室に戻ってしまい。扉を閉じてビーストが侵入してこないようにはっちゃんが押さえ込む。


窓の外にはあのドラゴン型の巨大なビーストが近づいて来る。


「くっ・・・ここまでか」


ミントは諦めかけていたその時、


「まだだ。まだ手はある!」


ネビロスの声がした。


「ネビロス様どこ!?」


声は、エクレアが抱える黒い犬型のヌイグルミからした。


「え・・・!?」


ミントは固まった。


「ぐらたん・・・聞いて! 信じられないかもしれないけど・・・・・・お兄さんが水晶玉に入っていて、更に、このぬいぐるみの中に入っちゃったの・・・」


エクレアはぬいぐるみを足元に置いた。するとぬいぐるみが立ち上がり、喋り出した。


「・・・・・・。僕にも分からない・・・。レヴィアタンに水晶玉に封印された後、このぬいぐるみの上に落ちたら・・・・・・なんかこうなってしまった」


「あ・・・・・・ネビロス様・・・」


ミントはぬいぐるみを抱きしめた。


「ネビロス様が可愛くなちゃったーー!! でもまた会えてよかった!!」


「やめろ・・・ぐらたん・・・苦しい」


ぬいぐるみは目を回す。


「して、ネビロスとやら・・・・・・どうやってここから脱出するのじゃ?」


バンバンと扉がうるさくなるのを必死に押さえるはっちゃんが聞いた。


「アンタが思いつかないとはな・・・。アンタ、あめのはっか龍王だろ? 冥界の資料で見たことがある。アンタが龍の姿になってみんなを運んでくれれば・・・」


はっちゃんは思い出したように返事をした。


「そうじゃった! 忘れておった」


国王がはっちゃんを見る。


「もしや貴方様が、ミンティーフォレストの守り神!」


「む? その通りじゃ! 以前この街に来た時見かけたお前さんは、まだ幼い少年じゃったな。・・・・・・おっさんになったの」


「・・・・・・。は、はは・・・」


国王は後頭部を撫でる。


「うーぬ。しかし、この狭さじゃ、変身は・・・」


「そうか・・・」


ぬいぐるみのネビロスも腕を組んで考え込む。そうしているうちに外の巨大ビーストが口を開ける。


「まずい・・・みんな伏せるギャン!」


ウンギャンが叫ぶと、一斉にみんなは姿勢を低くする。次の瞬間、紫色の閃光が頭上を通り過ぎた。


「ぐっ・・・!」


光が収まり、ミントは見上げると、綺麗さっぱり無くなった天井から星空がみえる。空はうっすらと明るくなり始めていた。夜明けがいつのまにか近づいていたようだ。


壊れた扉から、ビーストが入ってこようとした。


しかし、天井は綺麗になくなったのではっちゃんが龍の姿に戻るのに十分過ぎるスペースができた。


「今じゃ!」


はっちゃんは光輝き、龍の姿になった。


「みんな早く乗るのじゃ!」


全員がモフモフの龍にしがみついた。


みんなを乗せた龍は空に舞う。


「やったぞ! うまくいったな!」


ぬいぐるみのネビロスは遠くなっていく城を見下ろした。


「あのビーストをどうする? 必殺技が全然効かないの」


ミカンは巨大なビーストを見る。




そうだ。後はあの強敵をどうやって倒すかだ。




悩んでいるうちに下から脅威が迫っていた。一緒にしがみついて来た1体のアリ型のビーストが登って来るのに気づかなかった。


「あくむーーーん!」


「ぐらたん! 危ない!!」


ネビロスはミントを庇い飛び出した。ビーストは飛び込んできたぬいぐるみを掴んだが、その拍子にはっちゃんから落ちてしまう。


「うわ!?」


ネビロスはビーストと共に落ちていく。


「ネビロス様!!」


ぐらたんは思わず手を離し、落下する彼を追う!


「ぐらたんが!!」


エクレアが身を乗り出すが、王に押さえられる。


「ダメだ! 下を見ては!!」


「はっちゃん! ミントたちを助けに・・・」


「ダメじゃ・・・急に旋回しては、ソナタらが振り落とされかねん!!」


「そんな・・・」


龍の背中の上でみんなは、ただミントの無事を祈るしかなかった。




☆☆☆


一緒に落下するアリ型のビーストは他のアリ型と違ってひと回り大きく、一丁前にマントをつけている。ひょっとするとコイツが本体で、たくさん増殖させてきたわけか・・・・・・


って今はどうでもいい! 落ちていく!!




「うわあああああ!」


落下中、上から高スピードでこちらに向かってくる人影が・・・それは、


ぐらたんが変身するイチゴミント。


ロッドから回復呪文ミントストームの風力で加速して来る。


ミントは追いついて、ぬいぐるみのネビロスを抱き止める。


「ネビロス様! 捕まえた!!」


「ぐらたん! 僕に付き合う必要は・・・」


「やっと再会したんだマスター! もう離れない!!」


「そ、そうか・・・・・・心配かけてすまない。あの女王アリが無限にビーストを作ってるかもしれない。まずはアイツを倒す」


「承知!」


ミントは落下しながら、左腕でネビロスを抱え込み、ロッドを下に向ける。


「イヌガミック・ドライブ! ・・・ミント・リフレッシュ・トルネード!!」


ロッドから閃光する渦が落下する女王アリのビーストを巻き込んだ。ビーストは光の粒子となって浄化された。


そのあと城の庭にもいる点々と群れをなすビーストたちが次々と光の粒子になって消えていく。


ミント・リフレッシュ・トルネードの反動である程度上昇したが、はっちゃんはまだまだ上空だ。はっちゃんも高度を下げて助けに向かって来てるのは分かるが、間に合わない。


「やったー! ネビロス様の読み通り! ・・・これからどうしよー・・・」


「ん・・・そーだな・・・・・・これから先は考えていなかった・・・」


ミントとネビロスは顔を見合わせたまま落下していく。


「「うわあああああああああああああ!!」」

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