#28「アギャン・・・・・・そんなことできたの!?」

あの小僧・・・どこに消えた!?


しかし・・・犬神少女に侵入を許すとは!! 後で船虫にお仕置きじゃ! ヌイは敗走したか・・・・・・。


ぐらたん・・・ソナタが犬神少女だったとは・・・なんという運命か・・・邪魔をするというのなら・・・・・・ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!




いろいろなことが同時に起こり、邪龍の頭の中をグルグルと駆け巡る。


王室に置いていったはずの水晶玉が見当たらない。王室をくまなく探したが見つからなかった。王族親子に聞いたが、気が付かなかったと答えただけだった。やむ追えず、レヴィアタンは城中を探し回る。




失せ物を探すのは嫌いじゃ!!




レヴィアタンは2階に降りてエントランスホールに続く広い渡り廊下を進むが、突き当りの扉の前に巨大なモフモフの生物が立っていた。


「やっと会えたのう・・・レヴィアタン。いや、あめのすみれ龍姫」


モフモフの塊は邪龍に近づく。


「!!? ソナタは・・・・・・おじいさま!?」


はっちゃんは立ち止まる。


「左様、あめのはっか龍王じゃ。ここから通す訳にはいかぬ! あの子たちはやらせんよ」


レヴィアタンは鋭い目で睨む。


「なぜ今さら、出てきた!?」


「ソナタの行いは無駄じゃ・・・。アクムーンを手放すがよい・・・あれは怒りと悲しみを増やすのみよ。それ以上はソナタに何も残らん」


「・・・・・・。そうやってソナタはいつも・・・を否定してきた・・・」


レヴィアタンは太刀を抜き放つと、はっちゃんも鉄扇を袖から取りだした。


「よせ! アクムーンにとらわれるな!! ・・・ミント・ハリケーン!!」


はっちゃんは鉄扇を広げて振るう。凄まじい突風がレヴィアタンを襲う。




☆☆☆


エントランスホールの隅で犬神少女は回復のため眠りについたが、


「ん・・・はっ!? どれくらい寝てた!!?」


ミントは目を覚ました。横にはミカンがまだ寝ていた。


正面玄関から爆発が起こり、扉がすっ飛んでいった。開いた玄関口からアギャン、ウンギャンが飛び出してきた。


「ミント! みんなは無事に、門の外まで送り届けましたギャン!」


「でも、ジリ貧だギャン!」


続いてアリ型のビーストが次々と入ってきた。たちまち、ミントたちは大量のビーストたちに囲まれる。ミントはミントエスカッションを展開して、ビーストたちを阻みながら、眷属に声をかけた。


「ふぇえ!? なんで一緒に逃げなかったの?」


アギャンは答える。


「もちろん、ミントとミカンが心配で!」


側でウンギャンはミカンをゆする。


「ミカン! 起きて! 大量のアクムーンビーストだギャン!!」


「ん・・・・・・て、なんじゃこりゃ!? いつの間に私たち包囲されたの?」


突然の不利な状況にミカンは側にいたウンギャンを抱きしめる。ミントはエスカッションでビーストの大群を押しとどめるのに手一杯だ。


ここまで追い詰められると、ある程度のスペースがないとミカンの戦闘スタイルが活かせない。




「シトラスカット・ストライク!」


エスカッションの合間からブレイドを繰り出すミカン。持ち味が活かせず、一体一体の浄化は拉致が開かない。ミント・リフレッシュ・トルネードもエスカッション展開中には撃つことができない。


息をのむアギャンはミカンの帯に差してあったイヌガミギアを見て、


「ピンチを脱するには、イヌガミルクの力が・・・ミカン! おねーちゃんはしっかりしないとダメギャン?」


ミカンに聞いた。


「そうだね! おねーちゃんはいつだって、年下のために諦めない!! イヌガミック・ドライブ! ・・・・・・シトラスカット・ストライク!」


ミカンは必殺技を連続で繰り出す。このままでは彼女の神通力が持たない。ミントも集中してエスカッションを維持し続けている。


「じゃあ、私がなんとかするしか・・・・・・ウンギャン! 私のラジエーターウイングをむしり取るギャン!」


アギャンはウンギャンに頼み込んだ。


ラジエーターウイング。

堕天して魔界環境に順応できなかった者が生きていくために移植する翼である。いわば魔界での生命維持装置だ。外の者にとって魔界に漂うマナ粒子の量は細胞障害を引き起こす。そのため浴びたマナ粒子を体外へ放出する翼であるが、副次効果として粒子ジェットによる飛行が可能になる。



「ええ!! そんなことしたら、魔力が使えなくなるギャン! 最悪、帰れなくなるかもしれないギャン!」


「頼むギャン! 神通力が戻れば・・・・・・。ここはおねーちゃんとして頑張らなくちゃ!」


アギャンの覚悟にウンギャンは決意した。


「おねーちゃん・・・分かったギャン」


「頼ん・・・・・・ギャン!!」


ウンギャンはアギャンの背中に生えた小さな翼を強引に引きちぎった。突然の痛さに飛び上がったアギャン。


「ウンギャン! ・・・早い!! 心の準備を待って欲しかったギャン・・・・・・でもこれで・・・」


アギャンは光を放つと、ミントより少し大きめの少女に変わった。青白い髪に青いメッシュが入っているのと、青い垂れ耳と尻尾はそのままだ。


狩衣姿の少女にミカンは驚く。


「アギャンが大きくなっちゃった!!?」


そしてエスカッションを展開中のミントも驚く。


「アギャン・・・・・・そんなことできたの!?」


アギャンはミカンからイヌガミギアを受け取ると、頭の上に被せた。


「加勢するギャン! イヌガミライズ! マジカル・イヌガミルク!」


青白い光に包まれて、アギャンが変身するイヌガミルクが姿を現した。


「イヌガミック・ドライブ!」


アギャンミルクは二丁のミルクブラスターを抜き、構えた。ドレスの各箇所が発光して、銃口に光が集まる。


「ミルキー・ホット・バスター!!」


ミントは慌ててかがみこんだ。アギャンミルクのブラスターから極太ビームが照射されて、ビーストを一掃した。


「凄い! 味方だとこんなに頼もしいなんて・・・・・・」


「これで第1世代の犬神少女が揃ったギャン! 前提とされたスリーマンセルの戦いができるギャン!」


ミカンとウンギャンは歓喜した。


それでも、新たにビーストが押し寄せてくる。


「うわ・・・キリがないギャン!」


アギャンミルクがブラスターを乱射する中、ミントはふらついた。


「うっ・・・・・・何、この感じは!?」


頭を押さえて、少しかがむ。


「ミント! 大丈夫ですギャン!?」


ウンギャンが心配そうに覗き込む。


「大丈夫・・・・・・何か嫌な予感が・・・ミカン! ミルク! ここは任せたよ!!」


「え、ミント? 分かったわ! 任された!!」


ミルクの援護のもと、ミカンはビーストの群を斬り進み、ミントはミルクブラスターでできた血路を突き進んでいく。


ミントはホールの2階の扉に進んでいった。




この感じ・・・街で倒れた時と似ている・・・・・・この胸騒ぎは一体!?




ミントは導かれるまま、扉の向こうへ突き進むのだった。

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