#27「じゃーん! イヌガミギア、ゲットお!!」

水色の光の中から新たな犬神少女が現れた。クリーム色の髪と垂れた犬耳、尻尾、そして婦警を模した水色とクリーム色のドレスを纏っていた。


ホールの外の廊下でウンギャンが驚愕した。


「そんな・・・あれはIG-03、イヌガミルク! どうしてナイトメアユニオンが!?」


「ウンギャン! ミントたちに任せて、我々はみんなの護衛に集中するギャン!」


ウンギャンはヒロが誘導する列に戻って行った。


「マスターに仇なすものは排除する!」


ミルクは両腰のホルスターから拳銃ミルクブラスターを抜き、ミカンとミントに向かって発砲した。ミントは前に出る。


「ミントエスカッション!」


ミントの展開したバリアが淡い青色のビームを弾く。弾かれて逸れたビームが周りの備品を破壊する。


「ふっ!」


ミカンはミントの後ろから飛び出して、ブレイドで斬り付ける。


しかし、ブラスターのバレル下の部分から、短刀が展開して、ミカンの斬撃を受け止めた。


「!? ・・・どうして! 犬神少女のキミが、ナイトメアユニオンに!?」


シトラスブレイドとミルクブラスターがせめぎ合う中、ミカンは話しかける。ミルクはブレイドを弾く。


「犬神少女は関係ない・・・。これは私の意思だ。人類は思い知らなければならない・・・」


「え!?」


左手のブラスターの銃口がミカンの腹部を捉える。


「タマモ様こそが、この世界で唯一の神であるということを!!」


「ミカン! 離れて!!」


ミントはミントスラッシュをロッドに展開させて、ミカンとミルクに割って入ろうとするが、ミルクがトリガーを引くのが速かった。


「ミルキーマグナム!」


銃口から大きな光球がミカンに発射された。


「くあ・・・!!」


ゼロ距離で受けたミカンは後ろに吹っ飛ばされる。床に叩きつけられ、被弾した腹部を押さえる。


「うっ・・・・・・」


ミントは駆け寄る。


「ミカン!!」


「・・・ゴメン・・・。油断しちゃった・・・・・・」


命の別状はなさそうだが、ミカンのまぶたはだんだんと重たくなり、そして気を失ってしまった。ミントはミカンを隅に寄せ、立ち上がる。


「キサマもナイトメアユニオンなら、私も容赦はしない!」


ミントはロッドを構える。ミルクも銃を向ける。


「やってみるがいい。あとはキサマだけだ!」


ミルクブラスターが火を噴くが、ミントエスカッションでビームを弾く。


「やああああ!」


盾を展開したままミントは前に飛び出す。


「ちっ!」


ミルクはサイドステップして、空いた側面から斉射しようとしたが、


「何っ!?」


ミントの右脇の下から、左手で握られたロッド状の武器、エンゲルファウストロケット砲が向けられていた。弾頭が飛び出す。


「くっ!! ミルキーマグナム!」


咄嗟に光弾を発射して、ロケット弾と衝突した。ミントとミルクの間で激しい爆発が起こった。


爆炎の中ミントが飛び出し、蹴りを繰り出す。ミルクの右腕のブラスターを叩き落とした。


続けて流れるように左手首を掴み、背負い投げをした。


「イヌガミック・ドライブ! ぐう・・・」


投げられながらも神通力を増幅させたが、


床に叩きつけられた拍子に左のブラスターも手離してしまう。


ロッドがミルクの顔に向けれる。


「終わりだ!」


ミルクは呼吸が乱れながらも余裕の表情を見せている。


「いや、私の勝ちだ」


ちょうど手元にあったブラスターを拾い、発砲した。


「ミルキー・ホット・バスター!」


「な・・・!?」


銃口から上半身を覆うほどの青白いビームが放たれた。もろに受けたミントは放物線を描いて床に叩きつけられる。あとから外れたモノクルゲイザーが床に落ち、粉々に割れた。


「うぐっ・・・・・・」


ミントはうつ伏せに倒れてうずくまる。


「今楽にしてやる・・・ミルク・リチャージ!」


ミルクは起き上がり、ブラスターをリロードした。


すると光のクナイが飛んできてミルクはかわす。


「はあ、はあ・・・」


目を覚ましたミカンは最後の力を振り絞りミカンクナイを投擲したが、間も無く倒れた。


「くっ・・・。まだ動けたか・・・キサマは後だ! 奴を先に」


ミルクはミントに振り返るが、その場にミントがいなかった。


「なっ、どこだ・・・どこに行った・・・!!」


階段の隅で割れた壺が散らばっていた。その壺が置いてあった台の後ろに、ミントが被るナースキャップが見えていた。


「そこにいたか!」


ミルクはゆっくり台の裏に回り込んだ。


「!!?」


しかし、そこにあったのは帽子のみ。台に走る亀裂でできた溝に器用に引っかかっていただけだった。


「ミント・リフレッシュ・トルネード!」


ミントの声がどこからか聞こえた瞬間、横殴りに猛烈な暴風が襲う。


「ぐああああああっ!!」


台のそばにあった出入り口の影からミントが現れた。浄化呪文をもろに浴びて、ミルクは向こう側の壁に叩きつけられる。呪文自体に攻撃力は無い、ほぼ風の威力によるものだ。


変身が解けて、ミルクのイヌガミギアが外れるとヌイと共に床に落ちた。


「くっ・・・おのれ・・・」


ミントはロッドをヌイに向けたまま叫ぶ。


「タマモにでも伝えておけ! ・・・逆にキサマたちに悪夢をみせてやるって!」


ヌイはゆっくり立ち上がると、異空間のゲートを開いた。


「イチゴミント・・・覚えておく。いつかキサマを葬ってやる」


ヌイはこの場から去っていった。起き上がったミカンはお腹をおさえながらも、ヌイのいた隅まで歩く。


「はあ・・・ミント・・・手強い相手だったね。次もまた戦うこととなると、ゾッとする」


「ミカン、大丈夫?」


ミントはミカンに駆け寄る。


「お互い様だよ。私たち、ボロボロだね。だけど、まだまだ戦えるわ。」


「そうだね。エクレアちゃんを助けないと!」


ミカンは屈み込む。


「ミカン?」


ミントは心配そうにミカンを覗き込むと、彼女は勢いよくミルクのイヌガミギアを拾いあげた。


「じゃーん! イヌガミギア、ゲットお!! 中ボスの後にアイテム入手はお約束だね♪」


「ははは、相変わらずだね。よーし、ボス戦が近い! 体力の回復しよ!! 私のミントストームで」


「え!? あの欠陥治癒魔法で・・・?」


強風とリラックス効果で眠気が襲うという問題のありすぎる回復呪文だ。満身創痍で挑むよりは、体力万全で挑んだ方がいい。


ミントは自爆系回復呪文を唱えた。


戦いの緊張はまだ続いていたため、そんなに長く眠らなかったのは幸いだったが、その間にもことは進んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る