#23「ドンパチでもやるつもりか!!」
ぐらたんとカオリは病院に戻ると、そこには避難民が数人身を寄せていた。幸い人々は軽傷で済んでいたが、この先ドルチェルはどうなるのかと不安でいっぱいの雰囲気だ。
病室の前でやどりんとヒロ、そしてアギャンとウンギャンが待っていた。
「ごめん・・・みんな、助けることはできなかった」
ぐらたんは握り拳を強く握る。
「「お嬢様!」」
二匹の眷属が駆け寄る。
「アンタ・・・体は大丈夫なのか!? 無茶しやがって・・・・・・」
やどりんは怒っていたが心配はしてくれた。
ぐらたんは頷くと、
「そうは言っていられない! これから、城を攻めに行く。ナイトメアユニオンから解放するんだ! アギャン、ウンギャン! 準備するよ!! こっちに来て」
「「承知!」」
ぐらたんたちは病室に戻る。
カオリはあたりを見渡しながら聞く。
「あれ? そういえば、はっちゃんは・・・?」
「んあ? カオリと一緒に行ったんじゃないのか?」
やどりんは聞き返すが、カオリは首を振った。後に続き、カオリたちも病室に入っていった。
部屋の隅でぐらたんはリュックを開く。
「エンゲルファウストは、あのドラゴンタイプに効かなかった。残りは2発か・・・」
あのドラゴン型ビーストに向かって発射したロッド状の武器、エンゲルファウストは対天界軍降下空挺用の使い捨てのロケット砲だ。見た目から「ロッド」と愛称で呼ばれることもある。マナ粒子ジェットを推進として弾頭が飛翔し、目標に着弾することで弾頭内の魔術が発動する。だいたい爆裂系の魔術が施されているのが一般的だが、玄人向けに術式をいじることで多目的な運用も可能だ。
ドラゴン型ビーストの足止め程度にはなったが・・・
「あの規模は城を壊しかねない・・・。ベータ弾はある?」
エンゲルファウストベータ。爆発範囲を小規模に抑えたこちらは対天使兵器になる。
「8発あるギャン」
ウンギャンが取り出してみせる。
「お嬢様、6連装
アギャンがグレーのコンテナを取り出すと6発の小型魔導ミサイルが収まっていた。
「モノクルゲイザーがあればピンポイントを狙えるね! 使える物使っていこう。あとは魔導グレネード9つか・・・全てチェックしよ! 室内でも使えるように出力を抑えられる術を施しておこう。空間センサー確認!」
ぐらたんは右目にモノクルゲイザーを装着した。
モノクルゲイザーはモノクル型の戦闘補助ヘッドマウントディスプレイで、装備武器や敵味方識別や照準系などの情報を視界に映し出すインターフェイスである。通話機能もあり、モノクルから伸びるコードには耳たぶにつけるクリップ型のイヤホンが付いてある。なぜクリップ式かというと、魔界にはいろんな悪魔がいるため、多様な耳の形にも対応できるからである。
モノクルを右眼につけて、ミサイルランチャーに装備登録して武器情報を確認する。モノクルを通して視界に武装情報や照準などが浮かび上がる。
アギャンとウンギャンもモノクルを装着して、続けて柄のついた爆弾を取り出した。
「確認! お互いのIFFを認識!」
「空間センサーを出力と同期! マナアイドリング・リリース・・・。ロックを解除したギャン」
武装を着々と点検していくぐらたんたちをカオリたちが固まって見ていた。やどりんは焦った表情で声を上げる。
「お、おい! なんだよそりゃ!! そんな物騒なもん引っ張り出して・・・・・・ドンパチでもやるつもりか!! 城が壊れる!!」
ぐらたんは
「もちろん! 今度はこっちから仕掛ける。ヤツと渡り合うには、これくらいはいる。いや、足りないのかも・・・・・・。破壊力は熟知してるよ。あの、ヒロさん・・・ごめんなさい。エクレアちゃんたちを助けるためには・・・お城の形が少々変わってしまうけれど・・・」
「やっぱり壊す気満々じゃねーか!」
やどりんは頭を抱える。
ヒロは前に出てくる。
「承知いたしました・・・。姫様や陛下のことはあなた達犬神少女にお任せいたします。私も同行します。道案内は必要かと」
「うん! お願いします。どこからが攻めやすいですか?」
「こちらをご覧ください」
ヒロは携帯端末を取り出し、ドルチェル王城の外観図をホログラム映像で映し出した。端末から浮かび上がる小さなお城がゆっくり回転する。
「セキュリティは戦闘レベルに引き上げられて外に続く扉はみんなロックがかかっており侵入は困難です。」
「ヒロさんのセキュリティカードは?」
「残念ながら、奪われてしまいました。しかし、外壁は強固な造りですが、裏手、南側に位置します食糧庫周辺の壁がなぜか薄いです」
映像のお城で食糧庫がある箇所が赤く点滅する。
気になったカオリが聞いた。
「どうしてですか?」
「ん~・・・。万が一食糧庫のカギが紛失して取り出せなくなったとき、最終手段として破壊して取り出だすためでしょうか? よくわかりませんが」
「じゃあそこを爆破して大丈夫? 最悪食糧が吹き飛んでしまうけど」
ヒロは腕を組み考え込むが、すぐに回答した。
「・・・。やっちゃってください! 国家の一大事なのですから。しかし、そこまでどうやって侵入するかですね。城はクリーミートップの丘に位置していますからどの方角も見渡せます」
敷地内に入る以前に捕捉されやすいか・・・。潜伏魔術であるステルスマントなら容易だが、さすがに全員を隠蔽できるほど魔力が回復してい居ない。持っても数十秒が限界だろう。
「う~ん。何かに偽装できれば・・・」
ぐらたんが考え込む中、ヒロがパっと顔を上げひらめく。
「それなら! お任せください、私に良い考えが!」
ヒロの案によって潜入方法が凝り固まった。王城奪還作戦は着々と組みあがっていく。
さあ、パーティの再開だ。
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