#08「私が案内してあげる!」

「ティーナよ。あの子たちは無事にフレークベースシティに辿り着けたのだろうか・・・」


ミンティーフォレスト精霊の里で、はっちゃんは村長の家の窓に首を突っ込み村長に話しかける。


「ええ、大丈夫ですよ。はっちゃん様。今頃、巫女殿はフレークベースに着いているでしょう。あとは王立フレークベース大学附属高校に向かえば、新たな巫女に会えるでしょう」


村長ティーナは、はっちゃんの顎の下にちょうどあるチェストの上にハーブティーを置いた。


はっちゃんはなんとか右腕を差し込んで小さなカップをつまみ取った。


「会えるかの~・・・して、ティーナよ。その助けとなる娘は誰じゃ?」


はっちゃんの言葉に、椅子に掛けてお茶をするティーナは口を大きく開けて突然立ち上がった。


「ああ!!」


思い出したように急に立ち上がったティーナに驚き、はっちゃんはむせてハーブティーを吹き出した。


「げふん、げふん! ・・・いったいどうしたのじゃ!?」


「・・・あの子の名前を教えるの忘れた!」


「ええーーーーーーーーーーーーっ!!」




☆☆☆


フレークベースシティ駅を出るとそこは都会。ハッカタウンとは比べ物にならない大きな建物が並んでるのをぐらたんは感嘆し、はしゃいだ。


「ふぇーーーーーー! すごい! まるで帝都みたいだ」


「お嬢様、ここでお買い物たくさんできますね」


アギャンもはしゃぐ。その横でウンギャンはぼやく。


「え~、荷物持ちはもう勘弁だギャン」


その姿を見ては、ぐらたんとアギャンは笑うのであった。




いつかまたネビロス様と一緒に・・・




今は胸の内にしまっておき、ホロスクリーンに映る街の案内図を見て、目的地を確認する。


「フレークベース大学附属高校・・・っと」


駅から西に10分程度の距離にある。


ぐらたんは犬神少女になってくれそうな子を探しに高校へ向かう。


「精霊の里にいた子かあ・・・・・・一体どんな人なんだろ?」


ぐらたんはここに来て疑問に思っていた。同じく妖精なら小さいはず。目立つから高校に行けばすぐに見つかるはず。


進んでいると、


『ドルチェルタイムズです。昨日15:00ごろハッカタウンに再び巨大な魔物が現れました。場所は、ハッカタウン駅前です。』


デパートのホロスクリーンから、突然ニュースが流れてきた。


アナウンサーのお姉さんの後ろの映像には倒したオケラ型のアクムーンビーストが映っていた。


『町の魔物討伐隊の出動が要請されましたが、その前に謎の少女が魔物を退治し、町の混乱はおさまりました』


画像が切り替わると、ガッツリとイチゴミントが写っていた。


「ふぇえ!!?」




・・!! 私だー!!!




ぐらたんは赤面し、滝のように汗が額から流れて出てきた。


『駅出入り口付近の道路は復旧で通行止めになってしまいましたが、幸い怪我人はいませんでした。現在ドルチェル鉄道は平常で運行しています』


テロップには「謎の少女戦士出現。ハッカタウンを守る!」となっていた。


立ち止まって聴いていた通行人たちがつぶやく。


「これで2度目か・・・」「魔法少女だ!」「カワイイな」「映画の撮影とかじゃないの?」「あれって、犬神少女だよね? 沈んじゃった戌ノ国のだっけ?」




魔界の悪魔とバレるよりはマシだが、これはこれで・・・




ぐらたんはフードを被りアギャン、ウンギャンを抱き抱えて急いで退散した。すれ違う人々の視線が刺さる。


走っているうちに角から、少女が飛び出してきた。


「うわっ!」「きゃ!!」「「ギャン!!」」


勢いよくぶつかってしまった。二匹の眷属が同時に投げ出されるが、空中で浮遊して止まる。ぶつかってしまった少女とぐらたんは尻餅をつく。


「いたた・・・ゴメン。急いでたから」


「ううん。私もよそ見してたから、ごめんね」


栗色の髪に、パーカー姿の少女。肩にかけている鞄には「フレークベース大学附属高校」と書かれていたことにぐらたんは気づく。


「あ、フレークベース大学附属高校・・・」


少女は立ち上がりスカートを払った。背はぐらたんより大きい。ネビロスと同じくらいか、少し低いくらいである。


「ん? そうだよ! ・・・どうしたの?」


少女は聞き返す。


「その高校に用事があって・・・」


「へえ~!! もしかして学校見学かな? キミ、中学生?」


ぐらたんは少し沈黙した後答える。


「・・・そ、そうなんだ! うん。見学~!」


「それは嬉しい! こんなカワイイ後輩、大歓迎だよお!! 私が案内してあげる!おねーちゃんに任せてね」


ぐらたんの腕を引っ張り扇動する女子高生。


ぐらたんは導かれるがままだ。


「ちょ・・・」


女子高生は振り返る。


「私はカオリ・タチバナ。カオリでいいよ。キミは?」


「私は・・・ぐらたんって呼んでね」


ぐらたんの両肩にそれぞれアギャン、ウンギャンが飛び移る。


「私はアギャン!」


「某はウンギャン!」


いきなり、ぐらたんの両肩から頭を出した眷属で元狛犬のガーゴイルたちにカオリは驚く。


「ええ~!! カワイイ! 何それ、ペット!? モフモフしていい?」


「お嬢様の眷属ギャン! あああああああ!!?」


答えたウンギャンはカオリにヒョイっと取り上げられて抱きしめられた。


「モフモフだあ! へえ、よく分かんないけど、使い魔と契約してるの? 最近物騒だし、ハッカタウンで魔物が出たって聞くし」


「そうだね・・・ホント、イヤになっちゃう」


親切な人に違いないが、相手のペースに翻弄され戸惑いながらもカオリという女子高生についていくことになった。

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