# 05「あんな! 古臭い! アイドルまがいの! ふざけた魔法少女モドキにやられたというのか!!?」

薄暗い部屋の中、壁や天井に張り巡らすように淡い紫色の光が配線を伝って流れていく。

配線が集まる中心には作業台があり、その上にネビロスが封印された水晶玉が置かれている。

邪龍レヴィアタンはネビロスから抽出した記憶をデータ化したものを眺める。たくさんの文字が流れるが全てどうでもいいことだった。

「ぬう・・・ザッハトルテの作り方などどうでもいい。ソナタ、お菓子のことしか考えておらんのか!?」

レヴィアタンは歯痒い気持ちで、手で口を拭うのであった。

「作ってやらないこともないぞ? ここから僕を出してくれたら・・・」

「その手にはのらん!・・・・・・妾には分かるぞ! 逃げようとしているのを!」


簡単な手だが念のために聞いてみただけだ。水晶玉みたいな特殊な結界でぐらたんとの連絡さえつかない。せめて頼みの綱である自身の大鎌があれば・・・

とにかく自身に秘められた術が何か分かれば、その中に打ち破れる術があるかも。このまま秘術が解析されれるのもありなのかもしれない・・・


そう考えているうちに、船虫が帰ってきた。

「ただいま・・・・・・」


何かオドオドとした表情でゆっくり部屋に入ってきた。第一印象とまるで違う。


「帰ったか船虫! どうじゃ? アクムーンは? して、ハッカタウンのお菓子はどうしたのじゃ?」

「へへへ・・・それが・・・かくかくしかじか・・・・・・」

「なんと!・・・分かるように説明せよ、船虫」


口を無理やり釣り上げさせて笑顔を作っているが目を合わせない気まずい船虫の表情から、恐らく彼女らにとって悪いニュースを持ち帰ったのだろう。


「・・・・・・アクムーンが消し飛んだ。今回のマナの回収は失敗・・・」

「・・・して、お菓子は?」

「・・・そりゃ、戦利品はねーよ」

レヴィアタンはカッと鋭い目つきで、暫く黙り込むと、

「キサマ!!・・・・・・頼んでおいたお土産はないというのか!!」

船虫の両肩を掴み、激しく揺さぶる。

「怒るとこ、ちげーだろ!!・・・・・・い、犬神少女!」

突然漏らした単語に、邪龍は手を離す。船虫は頭を少しクラクラさせながら話を続ける。

「犬神少女が現れて、アクムーンはヤツに浄化させられた」

レヴィアタンは隻眼を瞑り、後ろに振り返る。するとすぐに船虫向き直り、声を荒げる。

「あんな! 古臭い! アイドルまがいの! ふざけた魔法少女モドキにやられたというのか!!?」


ひどい言われようだが犬神少女とは一体?


気になるネビロスはそのまま水晶の中で様子を伺う。

「そ、そうだぜ! ・・・けど奴はネビロスの飼い犬だ。コイツを人質に使えばどうってことないぜ!」

船虫はこちらに気付きチラっと目をやる。


ぐらたんが!? その犬神少女とやらに?


ネビロスは無言のまま自分の使い魔が犬神少女となってそのアクムーンと闘っていたことに驚く。

「ふん、まあ良い! 新しいアクムーンの結晶体じゃ。生成サイクルはそんなに良くない、次は必ず持ち帰るのじゃ」

「へへ、あいよ! で、タマモ様とハーディニル2世の旦那は?」

アクムーンを懐に収め、他の仲間のことを邪龍に聞いた。

「タマモ殿は、レインボーバブル大陸の北方で例の物を探しておいでだ。アレが見つかればマナの回収も容易じゃろう。2世は同じくレインボーバブルの南東、キャラメール砂漠でアクムーンの材料となる死霊集めじゃ。ソナタ、ヤツらがいたらどうなっていたことやら」

「ひひひ。死霊集めなら、アタシの分野なのに」

船虫は大鎌を撫でる。

「タマモ殿にはソナタのことを報告しておく」

「ええ~~!! そりゃないぜ! レヴィアタン様。もともとは神さんだったんだろ~? 慈悲くれよ~」

姿勢を低くした船虫は触角をヘナんっとたらし、困惑した顔で邪龍を見上げる。

「我々、ナイトメアユニオンの妨げになる者は排除せねばならん! タマモ殿も犬神少女について何か知っておられよう。船虫よ、次の回収で挽回して見せよ! さすれば彼女も見直してくれよう」

「やるぜ! 今度こそ・・・ナイトメアユニオンの理想のために!」

「ナイトメアユニオンの理想のために!」

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