2話〜強く逞しくなりたかったのに

 勇者レイン…そう呼ばれる前は、だたのやんちゃの少年だった。

 僕らはいつか、夢の溢れる冒険の旅に出るんだと4人で話していた。


 他の2人は明らかに男としてレインに惚れてたけど…


 僕は純粋にレインの強さや逞しさ、男らしさ、そして冒険心に憧れていた。

 だから…2人に手を出し、あまつさえ冒険者ギルドから紹介された3人の女性に手を出すレインを見て悲しかった。


 バタン…「グスっ…ウッウっ…」


 レインの部屋を出て少しだけ泣いた。

 悔しかったから…レインが変わってしまった事… でも、一番悲しいのは僕の冒険は終わってしまった事…

 道具士1人では何も出来ない。

 そしてこの道具士というのはとてもお金かかかる。

 潤沢なアイテムがあって始めて活躍出来るからだ。

 Sランクパーティーだから僕みたいなお金のかかるお荷物が参加出来た。

 

「冒険…終わっちゃったぁ…うう」


 宿屋の自分の部屋に帰りながら独り言を言う…

 もしかしたら…誰か聞いてるかも知れないけど…活躍してない僕がいようといまいと…


 ドン 「あ、ごめんなさい…ちょっと前見て無くて…え!?タインさん!?」


 廊下を歩いていると仁王立ちしているタインさんにぶつかってしまった。


 アサシンギルドのトップから推薦された本物のアサシン…常に黒い外套を頭から被り片目だけ開いてる仮面を付ける彼女…いや、僕だけが知ってる秘密、それはという事。


「何で泣いてるんだ?」


「な、なな、何でも無いんです!ごめんなさい!」


 タインさんには泣いてる所を見られたくなかったな…


 僕が勇者レインから…憧れとめざす者が変わったきっかけとなった本物の戦士…僕の憧れ、アサシンのヘン・タイン。


 彼に惹かれつつあった自分が嫌だった…片や追放される金食い虫の道具士…片や世界が恐れる最強のアサシン…それに、こんなおかしな身体の僕が…彼に惹かれて良い分けないもん。

 

「ム?何かあったらいつでも相談すると良い」


 レインの忘れた心…優しさ、男らしさ。

 レインの失った探究心…この人はアサシンでありながら…そんな強さを持つ人だ…


「た、タタ、タインさんに相談するような事じゃないんです!ごめんなさい!」


「ムゥ…そうか」


 タインさんの眼が一瞬悲しそうに光ったけど、僕は走って自分の部屋に逃げてしまった。


 僕は未だに弱虫のままだ。



※初日だけ連続更新、もちろん他のもちゃんとやるよ!多分!


 

 

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