一章 天涯の剣
1-1
「私怨はないが、勅命だからな……悪いがアンタには死んでもらう」
意外な思いはしたものの、かといって、それで手を止めるものでもない。青嵐は相手の
すぐに、くた、と、突っ張っていた相手の身体から力が抜ける。それを確認した青嵐は、それまで青年の身を抱え込んでその動きを押さえていた左腕を静かに
支えを失った相手の身体は、まるで糸の切れた
青嵐の属する
天・地・人の三世界のうち、
夜に
青嵐はどうも孤児だったらしい。自分でもあまり覚えてはいないが、幼い頃、いまの凌国の王に拾われたようだった。その後、蜘蛛の
知識を学び、身体を鍛えて武芸を身につけ、長じてからは自らも蜘蛛の一員となっている。それでも、まだ
今回の任務が、初めて、
「天涯山主を殺せ、か……」
青嵐は、病の床に伏した国王から直接受けた命令を思い出して、ちいさくそう
凌国は、中原において、中央よりやや南に位置する国である。その国都から北の
天涯山の、天を突くがことき
深山に
だから、何に
今宵の
ほう、と、ひとつ息を
事が順調に運び過ぎて、かえって胸のざわつきを覚えないではなかった。だが、とにかくも、命じられたことは成し遂げたのだ。後は、天涯山主が護るという――そして、人に不老長生をもたらすという――龍玉を探し出して、凌国王のもとへと持ち帰ればいい。
自分にそう言い聞かせるようにしてひとつ頷くと、青嵐は黒い眸を、天涯山主の遺骸から
その瞬間、バサ、と、鳥か何かが飛び立つ羽音が聞こえてくる。
同時に、さぁあぁん、と、
そのときだ。
なぜか、ぞ、と、背筋が凍った。
奇妙な気配を背中に感じて、思わず振り向いた青嵐は、そこに、信じ難い光景を見た――……先程、己の手でたしかに絶命させたはずの青年の身体が、ゆら、と、立ち上がりかけている。
だが、青嵐が息を呑み、目を
長い
あ、と、思う間にも、相手は青嵐の
青嵐は
ならば、と、後ろへ飛び
経脈を流れる気血を封じられ、気が遠く失せていく。
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