第17話 ダンジョンナイン3

第十七話 ダンジョンナイン3

 ダンジョンエイトということは、出てくるモンスターすべて倒せないということである。

 だから、結局、核を取ってしまって、早々にこのダンジョンから撤退しなければならない。

「はあ、はあ。モンスターは来てないよね? 水。喉が渇いた」

 勢いよく水筒に入った水を飲む。

「ぷはっ。ダンジョンエイトだから、深部へ行くのに時間がかかる」

「そうね。モンスターに遭ってないだけでまだマシよね。早く、核を取ってしまって、このダンジョンから抜け出さないと!」

 その時、壁から何かが出てきた。否、それは、モンスターだった。

「待ってよ。私たちじゃどうしようもないのに……!」

 そのモンスターは、銀色のモンスターだった。

「水銀タイプだ。気をつけろ!」

 そう阿久津さんが言った。僕らは、避けながら、走り出す。

「みんな。僕がここを何とかする。だから、先へ進むんだ」

「馬鹿! それじゃあ、やられちゃうじゃない!」

 紅が叫んだ。

「仕方のないことだよ。僕の<完璧主義>で、水銀モンスターに強いやつが出るかもしれない。そうすれば、大丈夫だ」

「わかった。でも、一つだけ。私も戦う。阿久津さん、あなたに託しました」

「待てよ。そんなことできるわけ……。僕がそんなことできるわけないだろう? 僕は冒険者にとってみれば、まだまだレベルツーだ」

「阿久津さん。核を取ってください。破壊してください。あとでギルドに何を言われてもいい。だから、お願いです」

「畜生! わかったよ。僕が核を破壊する!」

 そう言って、阿久津さんは走り出した。

「ねえ。浩二。私、思ったんだけど……」

「何?」

 紅は、剣を鞘から抜き出しながら、言った。

「ダンジョンシックスを私たちは選んで来たじゃない?」

「うん。そうだね」

「6って、回転させると9になると思うの」

「じゃあ、やっぱり、ギルド側のミス?」

「そうね。そういうことになると思う」

 何ということだ。ギルドが、レベルを間違えた……。

「ということがわかっても、どうしたらいいかわからないね」

 僕が諦めにも似た言葉を吐露した。

「だから、戦うしかない。<完璧主義>!! 出てくれ! 頼む!」

 それで出たのが、<無限主義>だった。

「よし! あいつを飲み込め!!」

 そして、ブラックホールにモンスターは吸い込まれていった。

「よかった……。戦わずに済んだ……」

「よし。阿久津さんを追いかけよう。彼は本来は、まったくと言っていいほど、戦うことに長けていない!」

 そして、急いで、阿久津さんを追いかけた。

 すると、巨大なモンスターが現れた。

「畜生! あんなのを倒すことなんて……。まあいい! <完璧主義>!!」

 そこで現れたのが、<金属主義>だった。

「これは……。剣が動いている。いけっ!」

 適当に剣を振った。

 すると、生きているかのような動きで、モンスターに斬りかかった。

「紅! ここは、僕が食い止める。阿久津さんを追いかけてくれ!」

「だめよ! 死んじゃうわ!」

「死んでも別にいい。君だけは生きるんだ」

「だめ! 私も戦う。死ぬ時は一緒なんだから!」

「しょうがない。だったら、行くぞ! 力の限りを尽くして――」

 そう言った時、モンスターが真っ二つに割れた。

 何……だ?

 何が起こった?

「待たせたね」

 そう言ったのは、紅丸さんだった。

「紅丸さん! 無事だったのですね!」

「ああ。何とか、あのモンスターは倒せた。まったく。強すぎるよ。阿久津さんはどうした?」

「先に行ってます。追いかけましょう」

 それから、すぐに阿久津さんに会うことはできた。

「君たち。これが終わったら二郎系を奢ってくれよ」

「よし。このダンジョンを攻略しましょう。それしかない」

 そして、ダンジョンの深部へと、また進んでいった。


「ふむ……。生きているか。ちょっと甘く見積もったな」

 誰かが言った。

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