第16話 ダンジョンナイン2

第十六話 ダンジョンナイン2

 そこは薄暗い空間だった。

「大丈夫か? みんないるね? よし。もっと奥へと進もう」

 小さなランタンの仄かな光を頼りに、洞窟の冷たい岩肌を撫でながら、奥へと進んでいってる。

「あとどれくらいかしら……」

 紅が静かに言った。

「きっと一キロは過ぎただろうね。もうすぐ開かれた空間に出るだろう」

 そう紅丸さんが答える。

「こんなところを通ってて、無事にダンジョン攻略が終えたら、戻れるのかしら……?」

「大丈夫だと思うよ。核さえ取っちゃえば大丈夫な気はする」

 そう僕は言った。

 本当にそうだろうか?

「この空間が終われば、きっとモンスターが出るだろう」

「そうですね……」

 僕らはダンジョンを攻略していた。

 そこはレベルシックスのダンジョンだった。

 誰も攻略できないダンジョンと言われていた。

 だが、凶悪なモンスターにまだ、出会っていない。

 だから、核を先に取ってしまい、攻略してしまおうというのが狙いだった。

「油断はしてはならない。ここのは相当に厄介だぞ」

 阿久津さんがデータベースと照合しながら、言った。

「僕こそモンスターではあるが、こんな高難易度のダンジョンのモンスターとは会いたくもないね」

 それくらい強いということなのだ。紅丸さんの言うことには、少し言葉の重みがある。

「極論言っちゃえば、さっき浩二が言ったように、モンスターと遭わずに核を取ってしまえば、何の問題もないし、レベルワン以下よね」

 確かに。紅の言い分はわかる。

 だが、そんな簡単には、行かないのが、ダンジョン攻略だ。

「グルルルル……」

 何かの唸り声だ。現れたな――。

 そもそもなぜ、僕らがレベルシックスに挑戦しているかというと……。


「どうして、レベルシックスなんだい?」

 僕が紅に問うた。

「私たちの給料を底上げするためよ。レベルスリークラスじゃいつまで経ってもキツキツだから、ここでパーッと稼ぐのよ」

「となると、ギルドの報酬だけでは、だめだということだね」

 それはつまり、モンスターの部位を剥ぎ取り、持って帰る……ということだ。

「それは要するに、モンスターを回避して、核を取って帰るだけ――だけじゃだめだということになる。戦うことは避けられない」

「レベルフォーくらいにしておけばよかったね」

 ははは、と乾いた笑いをする一同。

「あれ? でも前ギルマスって、レベルいくつでしたっけ?」

「レベルセブンくらいは、大丈夫だよ」

「最高は、ナインでしたっけ」

「それはパーティの強さによる。僕個人というか単体では、レベルセブンが限度だね」

 確かに、僕らのレベルでは、レベルスリーが最高。

 まあ、紅丸さんがいれば大丈夫だろう。

「よし。このまま進もう」

 僕がそう言って、みんなで進んでいった。

 その時、壁のメリメリという音が聞こえた。

 来た――。

 モンスターだ。モンスターが生まれたのだ。

「グギャアアッ!」

「おい。嘘だろ……」

 そう言ったのは、前ギルマスの紅丸さんだった。

「え? レベルシックスの何かじゃないんですか?」

「こいつは……レベルエイトのモンスターだ」

「何で、レベルエイト? 前みたいに、高難易度モンスターが出てるってこと? またなの?」

 紅が少し動揺した面持ちで、言った。

「よくわからない。レベルエイトが出るってことは、少なくとも、レベルエイト以上のダンジョンだ――ということくらいしかわからない」

「こういうことってよくあるのですか?」

「いや、なかなかないと思う」

 紅丸さんは言った。

 そりゃあ、そうだ。となると、ギルドの間違い……?

「とにかく。倒しましょ」

 紅が言った。

「いや、このパーティではだめだ。すぐにやられる。ここは逃げるしかない」

 そう阿久津さんが冷徹に言った。

「僕がここで食い止める。君たちは、先へ進んで核を取るんだ。それで、逃げるしかない」

 そう紅丸さんが言った。

「だめですよ。逃げるなら一緒に!」

「僕が死のうが関係ない。僕はモンスターだ。だが、君たちは、人間だろう? 駆逐すべきは何だ? モンスターだろ? だったら、行け!」

 行くんだ! 行かないと、君たちを殺す!

 そういう声がうしろで聞こえながら、前へ前へ進むしかなかった。


 あとがき

 ちょっと更新が遅れてしまってすみませんでした。朝書こうと思ったら、寝ちゃってて……。ではでは、次回もお楽しみに!

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