第12話 ラーヴァ学園編 3

第十二話 学園編3

 朝起きると、異常なのがわかった。

 部屋はもぬけの殻で、かなり荒らされている……。

 一体どうしたというのだ?

 牧田はどこに行った?

 彼の姿が見えない。ベッドはビリビリに破かれ、中の綿のようなものが散乱している。

「何が起きたんだ?」

「逃げて!」

 そう外から聞こえた。

 逃げる?

 何か敵襲でもあったのか? モンスターが沸いたとか、ダンジョンが発生したとか。

 まさか、前ギルドマスターが現れたとか?

「くそっ! どこにも平穏なんてものはないのかよ!」

 部屋を出て、寮の外まで行った。そこには、体がマグマに覆われた三メートルくらいの巨人が立っていた。

 誰かを持ち上げている。おそらく、もうやられてしまっているだろう。

「離せ!」

「お前は、誰だ?」

「僕は、烏丸浩二! お前を倒すために生まれてきた!」

「は! たわけ……」

「<主義>!!」

 え? <主義>?

 僕は、勝手に主義という言葉を発していた。どういうことだ? なぜ、<主義>ということを? 僕にはないぞ?

 だって僕は無色なのだから……。

「<主義>、顕現せよ!」

「お前には、まだ早い……」

 と言った、相手の首を吹っ飛ばしていた。

「何だ? 今の……」

 目の前にステータス画面のようなものが現れる。

 <完璧主義>。読み方を<オールマイティ>。

「僕に<主義>?」

 そう言ったのも束の間、あちこちからモンスターが現れた。

「ええい! やるしかねえ! <完璧主義>!!」

 手が燃えている。しかし、痛みも熱さも感じない。

 これは<火焔主義>じゃないか?

 もしかして、僕の体得した<主義>って、いろんな<主義>を出せるけど、ランダムってやつ?

 まあいいや、こいつをぶっ飛ばす!

「えああああ!」

 思いっきり、殴りつけた。相手は体全身に炎を纏い、散り散りになって消えた。

 効果は三分間。

 三分間ランダムで、何らかの<主義>が発動する仕組み。

 きっかり三分で、力が失われていくのがわかる。

「おーい、浩二」

「セイジか。生きてたんだな」

「どうやら、俺たちは、モンスターの発現に遭ってしまったらしいな」

「ってことは、無色の生徒は軒並みやられたな」

「ああ。生き残ってるのは、ごく少数だ。しかも二ユースを聞く限りじゃあ、ここだけらしいが、外から入ることも出ることもできないらしい。モンスターを倒さなければ出れないぜ、きっと」

「セイジ。僕、何かわからないけど、<主義>をゲットした模様」

「まじか! 俺もなんだ。俺は<鉄拳主義>。最高だぜ」

「よかったな。殴ればいい系か?」

「そうだ。超気持ちいいぜ!」

「うおっと。長話してる場合じゃないな。さっさと倒すぞ!」

「おう!」

 そして、<主義>を駆使して、何とか、モンスターを減らしていった。

「倒しても倒してもわいてくるな」

「たぶん、核がどっかにあるんだと思う。それを壊すか、抜き取らないと、モンスターは無限にわき続ける」

「くそっ! どこだよ」

 そして、ダンジョンを発見した。

「お。ここか……。今更、入らないって選択肢はないよな……?」

「あるわけねえだろ」

 そして、入っていった。モンスターを倒しながら。

「あれだ! 見えるか? セイジ!」

「ああ。見えるぜ。あれ、壊しちゃいけないんだっけ」

「そうだな。核は保存して持ち帰り納品するように、って確かギルド法が変わった気がする」

 そう。新しく、テラーの一員がギルドマスターになったことで、そういうふうになったのだ。

「慎重にやらないとダメだな」

「待てよ。ここのボスってあれか?」

 そこには、ドラゴンがいた。

「レベルナインクラスだぞ! 無理だよ」

 次に発現する<主義>が何かにもよるな。

「<完璧主義>!」

 それは、ブラックホールの主義、無限主義だった。

「ここにあいつを!」

「待て! 核が一緒に!」

 そういう間に、核ごと、吸い込まれ、<主義>の効果は切れた。

「壊してないから、セーフ?」

「だと思いたい」

 そして、この一件は幕を閉じたが……。

「烏丸浩二! 歩け! ユニオンへ幽閉する!」

 ユニオン……。そこは監獄だった。

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