第11話 ラーヴァ学園編 2

第十一話 学園編2

 その学園は全寮制だった。僕以外に男子は一名。自然とそいつと一緒の部屋になった。

「よろしくな。俺、牧田セイジ」

「よろしく。僕は烏丸浩二」

「へえ。珍しい苗字だね」

 僕の本当の生まれは、京都。京都に、河原町という場所があるが、その隣が烏丸と呼ばれる場所だ。

 しかし、そこからついた地名性なのかどうかは、はっきりとはわかっていない。

 ただ、どうやらそこが起源らしいということだけは、祖母から聞いた。

「京都にある地名。そこから来ているのかは、わかんない」

「そうなんだ。で、明日から授業だってな。予習はしたか?」

 牧田は、教科書を読むのではなく、パラパラとしてから、舌を出して、気持ち悪がった。

 ここに来ている全員が本気ではないということだ。

「予習はしておいたよ。確か、初級魔法だっけ。あと剣術、柔術、それから……」

「薬草学」

「そうそう。薬草学」

 そこで気づいた。あ、この人、ちゃんと予習している――と。

 そうでなきゃ、「薬草学」という言葉さえ、出てこないだろう。

「なんだ。ちゃんとやってるんじゃん」

「まあね。もう、パーティでお荷物とか言われたくないからな」

 まったく同感だった。

 僕も同じような理由でここへ来た。

 ここで学び、それを絶対に活かす。レベルフォー以上を一人でこなせるくらいになる!

「それで、他に男子はいないのかね」

「いないみたいだね。そもそも、男子で無色ってのが、珍しいらしい。アルビノって専門用語では言うらしいよ」

「白色の生き物に対して言う言葉だな。かっけえ!」

「まあ、無色からの脱却ができるかは、わからないけど、それ以外の魔法とかできたらいいなって思ってるよ」

「男がヒーラーか……」

「結構ヒーラーが、男性ってのは多いらしいよ。でも、やっぱり」

「そう。剣でバーサーカー的な方がかっこいいじゃん?」

「だよね。わかる」

「だから、一番楽しみな授業は、剣術の授業なんだ。きっと最初は、竹刀からだと思うけどな」

 まあ、それでも、何もしないよりはマシだ。

 でも、こういうように、所属している仲間がちゃんとした人でよかった。

 適当に郵便物を届けていたのかと少し考えていたが、ちゃんと無色の中でも選んでいるのだと思った。

 そして、僕らは、外で外食をした。

「やっぱり、ラーメンは家系に限るな!」

 その時、二郎系を考えていた。

 全寮制ってことは、あの宿屋から来ることはできないから、紅ともしばらく会えなくなるな……。

 そんなことを二郎系を連想して思った。

「どうした? 口に合わないか?」

「いや。美味いよ。コッテリしてて」

「だろ? ここ、俺好きなんだ」

「へえ。家系って何」

「こういうの」

 そう言って、ラーメンを指差す。

 まあ、それっぽいけれども。

「俺もよくわかんね」

「僕もよくわかんない」

 ははは、と笑い合った。

 そして、汁まで飲み干して、寮に戻った。

「風呂は時間で分かれているらしい。そろそろだな。よっしゃ行こうぜ」

 そして、何もなく、普通にシャワーを浴びて、部屋で寝た。

「寝たか?」

「起きてる。少し何だろう、ワクワクしてたというか、しているというか」

「だろうな。俺もだ。ちょっとどうなるか、ワクワクしている」

「これで何かパーティのために何かできるかなって」

「そうだな。もし、学校を卒業できたら、一回くらい、ダンジョン攻略、一緒にしような」

「ああ。ダンジョン攻略したら、きっと楽しそうだ」

 そして、ぐっすりと寝た。

「諸君。この学校を少し舐めているかもしれないと思って、教科書を配った」

 目の前には辞書並みの本が置かれていた。

 これ、読むのか?

「というわけで、これを明日までに読んでくること! 今日は自習だ」

 マジかよ……。

 これを明日までに?

 無理だろ。

「これは一種の試験だな」

 その意味はまだわかってなかった。

 そして、すごい一年が始まるとは、思いもしなかった。

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