第59話 友軍

「MGO、左大砲レフト・キャノン大破!」


 日向は、全身の痛みに意識が遠のくのを感じた。

 このまま意識が消えるのに任せたら、どんなに楽かと思う。

 

 でも、このまま意識を失えば、きっとすべてが終わってしまう。

 自分の命も、この国の未来も、そして彼の笑顔も。

 

 そんなの、嫌だ! 

 

 なんとか意識を手繰り寄せ、頭を振って必死にもがく。

 その刹那だった。


 ――⁉


 西の空に、突如、鉛色の巨大な飛行物体が現れた。


「あれは何! 新たな敵?」


 美空が叫ぶと、MGOFのスタッフが声を上げた。


「いいえ、友軍のようです!」


 その言葉に会議室にいた人々から驚きの声が上がる。


「友軍?」


「はい! たった今、宮内庁から入った情報によりますと、あの飛行物体には和泉宮理子殿下が搭乗されているとのことです!」


「理子殿下って……いったい、どういうこと?」


「信じがたいのですが、報告によりますと、あの飛行物体は古来より皇室に受け継がれた宇宙船のようです!」


「皇室に受け継がれた宇宙船だと⁉」


 美空の背後にいた大岩も声を上げ、立ち上がった。

 ふたりから視線を向けられ、小さくなったスタッフが答えた。


報告によりますと、飛行物体は大阪の大仙古墳地下から先程離陸した、と」


「そんな馬鹿――」


 ――大岩は言いかけた言葉を飲み込んだ。


 なぜなら、その飛行物体がまさに大仙古墳と同じ「前方後円」の形状をしていたからだ。正確には、円形が前に、方形が後ろになって飛行していたのだが。


 直後、対策本部会議室、そして日向のヘッドホンに理子の声が響いた。


「遅きに失しましたが、代々受け継いだ皇室の真の役目、果たさせて頂きます」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る