第58話 大破
「穂希さん! 穂希さん! 穂希さん!!」
日向の悲痛な叫びに、返事はなかった。
その間にも正面の空には、さらに多くの敵が集結しつつあった。
すでに目玉のような球形が百機以上はいそうだ。
編隊は、まるでそれ自体も不気味な巨大な目のようでもあった。
「来るわよ!」
悲嘆に暮れる暇も、与えられなかった。
美空の叫びと同時、腹部に集中して四、五発連続して被弾した。
肉体に直接鋭いボディブローを食らったような感覚で、呼吸ができなくなる。
「心拍急上昇! バイタル数値すべてアラート!」
「すぐに反撃して! そうしない限り相手の攻撃も止まないわ!」
日向は歯を食いしばり、過呼吸ぎみになりながらも念じた。
――撃て! 撃て! 撃て! 撃て!
日向が繰り出した反物質粒子砲は、すべて敵の中心部に命中した!
――撃て! 撃て! 撃て! 撃て! 撃て!
続けざまに、日向は攻撃を放つ。
「その調子よ!」
「敵、およそ数十機の消滅を確認!」
が、攻撃で破壊した分、外側の敵機が再び中央を埋め、編隊が元通りに構成される。
全体数も減っているように見えなかった。
つまり、今なお敵は集結し続けているようだった。
その時、立川の美空のもとに新たな情報がもたらされた。
「全国各地で黒雲が消滅しつつあるとの報告です!」
まさか全国に散っていた敵が、新宿に?
おそらくそうだと思いつつも、美空はそのことを日向には伝えなかった。
一方、日向はなおも連続攻撃を続けていた。
が、やはり敵の数は一向に減らなかった。無限に湧いてくるようだった。
当然、敵の報復もあった。その度、体を千切られるような痛みが走る。
それでも、日向は「撃て!」と念じ続ける。
痛覚も、意識も、ほとんど麻痺していたが、一心不乱に攻撃のことだけ考えた。
それは忍び寄る「死」への、切実な抵抗だった。
しかし、ついに息切れし、呼吸を整えるため、一瞬、膝に手を置くと敵を見た。
攻撃を狙う局所部分のみを見ていた視界が、より広い視野を捉えた。
愕然とした。今や敵の数は、正面の空を覆うほどになっていたからだ。
――その無数の敵の編隊は、もはや都庁をも凌ぐ大きさに見えた。
いかに反物質粒子砲の威力がすごくとも、これでは多勢に無勢。
直後、初めて敵が単機ではなく、連携して同時攻撃を放った。
これまでにない太さの白い閃光が、都庁の左肩の
「MGO、
日向の肩に、えぐられたような激痛が走った!
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