第27話 東の黒煙
目覚めると、駆は違和感を覚えた。
天井に見覚えがなかったからだ。
――ここは?
駆は何とか思考を巡らせる。すぐに昨日の記憶が蘇った。
そうだ。昨日は色々あって、ここに、この廃校に泊まったのだ。日向と一緒に。
そこまで回想し、視線を左に向けた。
が、そこにいるはずの日向の姿が、なかった。
驚いて飛び起きる。
すぐに周りを見回すが、日向の姿はない。
窓の外はすでに白んでいた。
嫌な予感が胸に広がる。
――日向はどこへ?
駆は、掃き出し窓へと足をもつれさせながら走った。
そして、カーテンと窓を勢いよく開けた。
露出が合わず、視界が真っ白になる。
目を細め、それでも外に目を凝らす。
徐々に、見覚えのある制服の後ろ姿が浮かび上がった。
心に安堵が広がっていく。
彼女が、日向が、振り返った。
「おはよう」
その笑顔は朝の空気のように澄んで、どこまでも純粋なものに感じられた。
同時に、とても脆いものにも思えた。
また少し心に不安が広がる。
――自分は、この笑顔を、今日も守ることができるだろうか?
それでも、駆は無理やり笑顔をつくると答えた。
「あぁ、おはよう。いい天気だ」
「いい……天気?」
日向は首を傾げた。
駆はしまったと思う。空は、今日も曇天だった。
そして、東の空には不穏な黒煙もまだ残っていた。
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