第24話 確信
「ざ、在日米軍が、撤退を開始しました!」
会議場はざわめいた。
「おい、それは本当か!」
代田は立ち上がり、その職員に問うた。
「……はい」
「日米同盟は! 日米安保はどうした!」
代田がなおも食い下がるように叫ぶ。
「在日米軍および米国政府は、自国民の安全と生命を鑑み、苦渋の決断した、と……」
職員が答えると、代田はそのまま力なく席に腰を落とした。
議場の動揺は、まだ収まっておらず四方でささやき声が聞こえる。
米軍すら撤退するレベルの危機なのか?
日米安保は結局機能しなかったのか?
アメリカは日本を見捨てたのか?
ざわめきが大きくなると、大岩が静かに席を立った。そして、
「うろたえるな!」と一喝した。
「米軍が撤退したから、なんだ! 米軍がいようがいまいが、私たちのやることは変わらんだろう! 自分たちの国を、生まれ育ったこの国を、未曾有の危機から守る! それが、私たちの役目だ! 自分たちの国は、自分たちの手で守る! その気概はないのか! やれることはいくらだってあるだろ! 米国とのことは、代田総理臨時代理はじめ政府に任せておけばいい! 君らは、自分のやるべきことに、眼前の仕事に全力を尽くせ!」
会議場が静まり返った。誰も言葉を発しなかった。
すると大岩が再び一喝した。
「返事!」
会議場に「はい!」という声がこだまし、同時に散会となった。
「大岩先生の一喝、胸に染みました」
会議終了後、本部長室に入ると、代田は大岩に言った。
室内には代田、大岩に加え、武田、天馬がいた。
「本来なら、首相たる君が言うべきことを、私が代弁したまでだ!」
大岩は代田を睨み、そう返した。
「し、失礼しました!」代田はそう言うと、小さくなった。
大岩はそんな代田には目を向けず、天馬に語りかけた。
「で、天馬、この映像をどう思う?」
天馬の前には、ノートパソコンがあり、そこには昨日、武田が大岩らに見せた爆発の瞬間の映像が映し出されていた。
「映像を見る限り、やはりこの攻撃は地球上の通常兵器によるものとは思えません」
「やはりそうか」
「はい。加えて、先程、在日米軍が撤退したという事実こそが、この敵の正体を暗に示唆しているとも思いました」
大岩は、深くうなずく。
「在日米軍は、日本に押し寄せている敵に自分たちの力は及ばないと知らされたんだと思います。おそらく、本国からもたらされた情報によって」
「だから、自国民の安全と生命を鑑み、というわけだな」
「その通りです」
「昔から変わらんな、すべて自分都合だ」
武田が遠慮がちに割って入った。
「すみません、大岩先生、天馬教授。で、その敵というのはやはり……」
天馬が大岩の方を一瞥すると、大岩がうなずく。それを受け、天馬が答えた。
「はい、想定されていた異星人による攻撃と思われます」
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