第6話 謎深まる夜
カイは深夜、研究資料と映るモニターの青白い光に照らされながら、疲れた眼差しで巨大ナメクジのデータを見つめていた。彼の心は、先日目撃した悲劇の映像から離れず、解決策を見つけるための圧倒的な使命感に駆り立てられていた。
その時、部屋の隅で何かが微かに囁いたような気がして、カイははっとした。「カイ…」という声が、空気を振るわせる。彼は辺りを見渡すが、誰もいない。それはもう、見慣れた現象だった。謎の声だ。
「見極める眼を持て。根源に触れよ。」
カイは一瞬、困惑したが、すぐに冷静を取り戻す。この声は以前から彼に指針を与えてきた。しかし今回のメッセージは、何を意味しているのだろうか?カイは深く考え込んだ。根源に触れる――それは、この巨大ナメクジ、あるいはナメクジたち全体の起源を解明することを指しているのかもしれない。
翌日、カイは防衛軍の資料室で、この地域の過去の生態系に関する資料を漁り始めた。何世紀にもわたる自然変動、人間活動の影響、そして伝説や民話にまで手を伸ばし、ナメクジが登場する物語の根拠を探った。
その過程で、彼は驚くべき発見をする。何百年も前の文献に、現代の巨大ナメクジに酷似した生物が「地の精」として崇拝され、自然との調和を保つ守護者として扱われていた記録があった。それは、人々と自然の間に溝ができ始めた頃、姿を消したとされている。
カイは、今回の襲撃が、人間による自然環境への過度な介入と、その結果生じる自然界のバランスの崩れに対する、何らかの警鐘なのかもしれないと推測した。彼は、この「地の精」が再び現れた理由、そしてそれが現代の都市で何を求めているのかを探る決意を固める。
カイの心は新たなる目的で燃えた。謎の声が彼に示した「根源に触れる」という言葉は、ナメクジとの戦いを超えた、もっと大きな真実へと彼を導いているのかもしれない。この発見を共有するため、彼は防衛軍の上層部に報告し、同時にフリースクールの子供たちにも、自然との共生について考えさせる教材としてこの話を取り入れることにした。
カイは、この謎を解き明かすことが、巨大ナメクジの脅威を終わらせる鍵であると確信していた。だがその道のりは、彼が想像していた以上に遥かに長く、複雑であることを、彼はまだ知らない。
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