エピローグ
カラウリからの手紙
✉
フヨウちゃんへ
げんきですか?
おれは、げんきにしてます。
もちろんフヨウちゃんがいなくてすごくつまんないけどね。
でもフヨウちゃんがりっぱなかみさまになってくれたなら、すごくうれしいです。
ようかいっていわれるより、かみさまのほうがずっといいでしょ?
さいきんはしょうせつをかくようになりました。
いまかいているのは、てがみのやりとりをかいたおはなしです。
もちろんフヨウちゃんといっしょに、おしごとをしていたときのはなし。
それをかいていると、なんだかフヨウちゃんがすぐそばにいるきがするのです。
ふたりでたくさんのおてがみをよんだよね。
ふたりでたくさんのおへんじをかいたよね。
たのしいおてがみ、つらいおてがみ、おもしろいてがみ、ふしぎなてがみ、いろんなてがみがあったよね。
そういうのをたくさんあつめたものがたりになるよていです。
ほんのなまえも、もうきまっています。
『だいひつやカラウリのゆううつ』
ちかいうちにこのものがたりをじぶんでちゃんとしたほんにするつもりです。
てづくりのほんで、せかいでただいっさつのほんになります。
おれとフヨウちゃんだけがしってるひみつのほんです。
このほんができあがったらフヨウちゃんにおくります。
おくるときにはまたてがみをかきますね。
フヨウちゃん、からだにきをつけて、たのしくすごしてくださいね。
からうり
✉
ま。こんな感じだろうか。
あれからオレは現実世界に戻ってしまった。今は会社員として、朝から満員電車に揺られて、ろくでもないクレームの電話の対応して、コンビニでつまんない食事して、パソコンで小説をせっせと書いて、真夜中を過ぎたのに気付いてあわてて眠る、そんな日々を送っている。
たまに眠れない日には、カーテンの隙間から月を見ながら、フヨウちゃんと過ごした日々を思い出す。そうするとなんだか心の中が温かくなって、無性に泣けてきて、涙がこぼれないうちに布団にくるまる。
そんな日々を過ごしながらもようやくオレの本が完成する。
ちょっといい和紙に文面をプリントして、厚紙で表紙を作って、その表面には押し花を飾った。それから和綴じの要領で本の形に紐止めしたら完成だ。
問題は、どうやってフヨウちゃんのもとに届けるかだ。
もちん宛先は知らないし、存在すらしていない可能性がある。
となると、あとはオレの思いが、フヨウちゃんにこの手紙と本を届けたいという気持ちが強ければ、この手紙が『郵界』へと迷い込むはずだ。
そう。あれからフヨウちゃんは神様になったけれど、きっと独りぼっちに違いないのだ。だからどうしてもこの本と手紙を届けたいのだ!
「妻野神さま、どうかお願いです、この手紙をフヨウちゃんに届けてください!」
とある月夜の晩。
オレは祈りをささげてから、それを投函した。
あの本と手紙が無事にフヨウちゃんのもとに届くことを願って……
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