六通目『スペシャルゴッド通信のメルマガ』
スペシャルゴッド通信のメルマガ 往信
「カラウリしゃんっ! たいへんれすっ! なんかいっぱいきたれすっ!」
フヨウちゃんがオレのスマホを手にあたふたしている。
「わっ、またきたれすっ! 止まんないれす、たすけてくらさいっ!」
オレのスマホからは新着メールのお知らせがじゃんじゃんと響き、ついでにバイブモードが耳障りなノイズをまき散らしている。もうコレ、迷惑メール確定だ。しかもこれだけ執拗なタイプは珍しい。なんかいっせいにこのアドレスが広まったのかもしれない。
「カラウリしゃん、どーしよ? 怖いれす……」
フヨウちゃんは今にも泣きそうだ。泣きそうになって騒音をまき散らすスマホを必死になって抑えている。ということで、さっとササッとスマホを取り上げて、とりあえず通知をオフにする。あとの対処はまぁ腰を据えてやるしかないだろう。
「フヨウちゃん、これでなんか買ったの?」
オレが聞くと、フヨウちゃんはコクンとうなずいた。
「ごえんなしゃい……」
そっか。だからスマホに触っちゃダメって言ってたのに。
「……カミと色エンピツ。カラウリしゃんにナイショでお手紙書くのに、字を練習しようと思ったんれす……ごえんなたい……」
ああーっ! そういうことなら仕方ないっ!
だろ? こんな健気なこと言われて責められるか?
無理だよ。絶対無理。
オレはしゃがんで、フヨウちゃんの目線に合わせる。
それからおかっぱ頭をくしゃっと撫でた。
「いいんだよ。悪いのはフヨウちゃんじゃないから。だってオレを喜ばせようとして買い物しただけだろ? なにも悪いことはしてないんだからさ」
そしてオレはムクムクと怒りが沸き上がるのを感じていた。こういうデジタルに弱い人間に付け込んで、詐欺みたいなことをする連中への怒りだ。
それに書きっぱなし、出しっぱなし、で大量に配布する行為は、代筆屋のオレからすれば手紙という存在への冒涜にほかならない。
どれ。ひとつ返信で復讐といこうじゃないか。
オレは届いたメールの一つを開いた……
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メルマガ担当のエンジェルちゃんです。
いつもスペシャルゴッド通信をお読み下さり有難うございます。
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