三通目『強すぎる妻からの手紙』
強すぎる妻からの手紙 往信
「カラウリしゃん、カラウリしゃん、なんかとどきました」
と、フヨウちゃんがオレのスマホを持ってテテテと廊下を走ってきた。
「スマホに? オレそういう知り合いなんていないけどな」
スマホを受け取ってみると、たしかにLINEが届いている。しかも登録した覚えのない相手から。どうやったのか分からないが、怪異もまた現代に合わせてアップデートしているのだろう。
「それ、おテガミでしゅか?」
そういうフヨウちゃんはなんだ嬉しそうだ。というのもプロフィール欄にはフリフリのアイドル衣装をきた女性が天使の笑顔を浮かべていたからだ。
そういえば、この女性には見覚えがある。この歳になるとアイドルの顔がみんな一緒に見えてくるものなのだが、彼女だけはちょっと違った。なんというか若いのに華があったのだ。
「まぁ手紙っていうより、メール……あ。同じ意味か」
まぁなにはともあれ、件のメッセージを開いてみると、ドドッと文字が連なっていった。
✉
LINEで悪いねんけど、1つ頼まれてくれるか!?
あんな!? うち《我妻興信所》のガリツマちゃんにな、女の子紹介したげたいねん!
ガリツマちゃんはアタシのことファン過ぎて、彼女いない歴=年齢やんか!?
アタシが、元ING48のスーパーエースのおかげで、理想が高くなりすぎてな、普通の女の子には満足できへんねや!
ほんでな、ガリツマちゃんは、見た目『ひょっこりはん』にクリソツねんな! 分かるやろ!?
そのうえ、服もヨレヨレの着てはるしな!
いくら世界に、女が40億人おるっちゅうても、さすがに、もうちょっとオシャレに目覚めさせんと、難しいやろ!?
せやから、『ひょっこりはん』みたいな男がタイプ言うとる、元・アイドルの子が奇跡的におってん、こりゃ紹介せな絶好のチャンスを逃すんちゃうか、と思って、食事の約束を取り付けさせたんや! アタシすごいやろ!?
ほんでな、頼みごとはな、ガリツマちゃんのデートを、
耀ちゃんにはな、洋服選びを手伝うてもらってん! 耀ちゃん、「この髪型に似合う服って何なの?」と嘆いとったわ……!
強にはな、2つお願いしたいことがあってん!
1つはな、職場の上司として、人生の先輩として、ビシッと、女子とのトークスキルを伝授してやってほしいんや! ガリツマちゃんは、仕事のときはビシッとしてんねんけど、それ以外ではシャイボーイなんや! ガリツマちゃんにとって、無敵の最強美人の我妻優を口説き落とした、我妻強はレジェンドなんや!
そして、もう1つのお願いはな、デートを尾行してもらいたいねん!
日にちはな、明日の土曜日の夜7時から、場所は、
きっとガリツマちゃんのことやから、デートがうまくいかんでも、アタシには見栄を張ってうまく行ったと言うはずやねん!
せやから、第三者的に、悪かったところをフィードバックせなあかんねや! ほんで、2人に気付かれへんようチェックして、アタシが帰ってくる明後日の夜までに、調査報告書をまとめとくことや!
土曜日は予定が詰まっとるかもしれんけど、よろしく頼むわ!
あ、子どもたちは、母ちゃんが日曜まで預かっとるから、安心してや!
ちゃんと、調査報告書をまとめたときには、熱いご褒美キッス💋が待ってんで!
でも、できひんかった場合には、必殺のコークスクリュー・ブローをお見舞いすんねん、覚悟せえや!
とゆーことやから、よろしく頼むわ!
✉
読み終えて、ちょっと呆然としてしまった。
プロフィールの可愛い女性と強烈な関西弁がどうも結びつかない。本当に同じ人物なのだろうか? なんかみてはいけないものを見てしまったような……宛先の『
「なんでこんなの紛れ込んだんだ?」
フヨウちゃんに聞いてみたが、彼女はおかっぱ頭を
まぁそうだろう。オレにだってワケわかんないんだから。
「でも、すごく困ってるお手紙みたいれしゅ」
そうか? なんかすごく威勢のいい関西弁が並んでるけど、まぁオレとフヨウちゃんのところに届いたってたことは確かに困ってるってことなんだろうが。
「どれ、とにかく返事書くしかないな……」
今回は紙とペンではなく、スマホに入力だ。
苦手なんだよな、コレ。
どれ。今回はその『
あとはどうなっても知らんけど。
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