第13話  「女」について俺は辛い思い出がある。

 「女」について俺は辛い思い出がある。

 小学校2年生の頃だった。新しく若い養護教諭が俺達の学校に赴任して来た。俺はその教師を気に入って纏わりついた。養護教諭は俺を受け入れてくれたように思えた。俺はその教諭にハグを求めたり自分からハグするだけでなく、胸や尻を触った。教諭はキュロットを履いていたが、スカートの裾に手を入れた。胸もセーターの首の部分から手を突っ込み直接胸を触ろうとした。保育園の頃、流行ってたHごっこをしたかったからだ。

「そういうことは大人になってからするのよ、五百蔵さん」

 教諭はそう言って俺の手を払いのけようとした。俺はその言葉が信じられなかった。そういう行為は、俺の親父と特別な女だけがヤる行為だと思っていたからだ。俺は養護教諭に恋人が居て、「Hごっこ」をしているなんて想像も出来なかった。

俺は諦めず、俺のズボンを脱いで局部を見せ、「ちんこ、なめてよ」と親父が嬢とヤっている言葉を真似て頼んだ。養護教諭は局部をなめることはしなかったが、胸や尻を衣類の上から触るのには抵抗しなくなった。

 その教諭は俺が小学4年のとき、結婚をした。俺は裏切られたような気がして、その養護教諭を殴った。顔面を鼻血が出るまで殴った。身を守るようにしゃがんだ養護教諭を、俺は蹴ったり拳で叩いたりした。俺の行為に気付いた他の教師が、俺と養護教諭を引き離した。

 俺は保健室の出入りを禁止された。親父は学校に呼び出されたが、学校には来なかった。

 女を触ることに快感を覚えた小学生の俺は、クラスメイトの女の子の胸や尻を触るようになった。触りながら俺は寂しくてたまらなかった。教師からは常に叱られるようになった俺は、小学校をサボりだした。

 俺は放課後の時間にはバイトへ行く途中、道を歩いている女の子がいれば、スカートめくりや胸触りをした。俺はやがて児童相談所に通報され、しばらくの間、保護施設で過ごした。バイト先の菓子店には、「虫垂炎になった」と親父が説明をしてくれた。俺は店が新しい店員を雇って、俺の居場所がなくならないかと心配をした。

 俺はそれ以降、胸や尻を触るのを止めたが、胸の寂しさは消えなかった。俺は例の菓子屋のアルバイトに精を出した。

 中学時代になると、俺は女の子に暴行をすることを妄想するようになった。が、現実では女の子と口を利くことすらしなかった。

 俺はQ界隈では、陰キャで通した。それでも面構えがいいせいか、女の子達が寄って来る。俺は女の子を避けた。女の子とはメールもLINEもしなかったし、しつこく纏わりつく女の子には、歯を剥きだしにして怒って剥がすように避けた。女の子達は俺に「女嫌いのはじめ」と仇名をつけた。

 俺はそれでも心の底は女の愛を求めていた。時々、俺はスマホを取り出し、遠くで暮らしているお袋と交わる妄想をして自慰をした。

 Q界隈の女の子達はいつも情熱的で完全な恋愛を夢見ている。そんな女の子を、俺は騙してセフレにするのには気がひけた。


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